作:杏
ケチ、とか言ってみたけど。それは本音なんて言えないから。
こんな菓子ひとつにいちいち全力で怒ってるおまえが可愛い、…なんて。
口が裂けても言えない。
文句を放つ口に目的のそれを入れてやれば、戻ってきたことにきょとんと目を瞬いている。
…誘っているのはその顔か、甘いチョコレートか?
どっちでもいいけど、その甘美な誘惑に俺は勝てなかった。
驚き固まる未夢に向かって、その距離を詰めていく。触れられる覚悟をしたのか、未夢はきつく目をつむった。
まだ片手で数えれるほどしか触れていない唇。嫌がってはいない、…はずなんだけど、そんなふうに力入れられると……ちょっと、な。
「………」
俺はわずかに距離を残して、力の入った未夢の瞼が開くのを待った。
「……………?」
予想通りのタイミングで、何も起こらないのを不思議に思ったらしい瞳が現れる。
「はい、3センチ」
「ほぇ…?」
こんなとき、俺の言葉は瞬時には伝わらない。なぜなら、未夢の頭はすでにオーバーヒートしてるから。
それが可笑しくて可愛くて。俺はさらに悪戯をふっかける。
「ナニ期待したの?」
「!!??」
お、やっと理解したか。
「……食べてほしいって顔してる」
…ここまでは悪戯だった。こいつにそんな意がないことはわかってるし。
さっきの覚悟には、期待を含んでいて欲しいとは思うけど。
「…食べていい?」
引き寄せた柔らかい身体が、俺の身体を熱くする。
至近距離で見上げる顔が真っ赤になって、その瞳が少しだけ潤みを増した。
「…いただきます」
予告をする余裕があっただけ、有り難いと思ってほしい。
誘ったのはチョコレートじゃなく、確実に……未夢。
予告から触れるまでに、未夢が覚悟どころか理解も出来てないのはわかっている。
けど、今日の甘さには敵わなかった。
チョコレートには媚薬効果があるらしい。
菓子と同じように、未夢の吐息にも艶をコーティングしてくれている。
今までにない熱さに戸惑いながらも、腕の中の未夢は拒みはしない。
「……ん、はぁ…、っ…!?」
呼吸をしようと逃げ出した唇を追う。せっかく開いてくれた唇。
誘われるままに、媚薬を纏った未夢を味わいに、舌を忍ばせた。
ビクッと身を硬くした未夢。それでも、遠慮がちに、たどたどしく、応えようとしてくれる。それがいじらしくて、俺はなお、煽られる。
「…み、ゆ…」
チョコレート味のキスが未夢の甘さに変わる頃には、下手くそに応えていたキスは俺にされるがままになり、俺のシャツを握り締めた手は力なく添えるだけになっていた。
震える腰が砕けたタイミングで、畳に座り込んで、膝に未夢を抱える。
落ちないように未夢の腰を支えていた手は、そこから動きたくて、その柔い身体を這いたくて。じっとりと汗ばんで、ずっと疼いている。
俺はその熱を堪えるように、キスに没頭した。
「…んぅ、…っ」
「頼むから…これ以上甘い声出すなよ…」
今日はまだ。
初めての大人なキスに応えてくれたことに、満足してやるから。
だからもう少しだけ、おまえを味わわせて。
きゃ〜〜〜〜〜〜!
…っと失礼、失礼。どーもどーも、杏です。
やはりみなしゃん、甘いのがお好きなんでしょうか(^^*)
とてつもない数の拍手、コメントに驚いております。
…んでもって、その中に幾つか、私がちょこっと匂わせた(笑)彷徨くんsideを…!ってお言葉を戴いたので、ノリで書き上げましたw
うっはぁ!甘い!…私にしては。
かくいう私も、甘々は大好きですが(〃▽〃)
それより遠カタ書けよ!って感じもひしひしと伝わってきます。
技量はどうあれ、あのまま放置されちゃあ、気になりますよねぇ(^^;
長編は内容が決まってても、構成に悩むから時間かかるんですぅ…(←言い訳w
短編でも、こーゆーのは先のと合うようにしなきゃいけないから、多少は悩みますけどね。でもこっちの方がまだ簡単ではあります。
…なんて言いながらも、遠カタもおいおい頑張ります。完結したときには、今みたいな拍手&コメントを戴けるように…頑張ろうっと。
ご愛読、ありがとうございました!