作:杏
「あっ! わたしの最後の1本〜〜〜!」
「いーじゃん、別に」
「よくな〜いっ!」
「…ケチだなー」
「っ…!」
両手を振りかざして立ち上がったわたしの口に、最後の1本が入った。
(えっ、ちょ、ちょっと…っ!)
反対側は彷徨の口の中。狼狽えるわたしに構うことなく、こっちに向かってくる。
(きゃ〜〜〜〜〜〜っっっ!!!)
いっぱいいっぱいで、それを折って逃げるとか、口から離すとか、思いもしなかった。
腰と後頭部に手を添えられて、きゅっと目を瞑って、至近距離の恋人に身構えた。
「………」
「………………?」
「はい、3センチ」
「ほぇ…?」
「ナニ期待したの?」
「!!??」
肩を上下させて笑う彷徨の手に力が入って、身体が密着する。
その3センチをくわえたまま、上を向くしかない頭の5センチ先に、彷徨の顔。
「……食べてほしいって顔してる」
そんなことない!…って言えるほどわたしの頭は冷静じゃいられなかった。
「…食べていい?」
身体中が熱くて、先のチョコまで溶けちゃいそう。
口の中には、すでにそこで溶け出した甘いチョコが広がってる。
「…いただきます」
「…っ! ふ、ぅん…っ」
結局。
最後の1本は、わたしが1センチも食べることなく彷徨に奪われた。
「…っ、は…かな…、も、ぉ……」
「ダメ、食べ足りない。 …もっと」
短い呼吸しかさせてくれないキスは、息をする度に深くなる。
チョコレートの残り香が消える頃には、立っていられなかった。
「――あま……」
「ン…っ」
座り込んでもまだ、解放されない唇。
チョコに隠されていた彷徨の色香が、わたしを離さない―――…
こんばんは。杏でございます。ご覧いただきましてありがとうございます。
たくさんの拍手、コメントもありがとうございます。
今日はポッ○ーの日!ってことで思い付き。
ここまでやって、ようやく十五夜のと大差ないなと思ったりしたけど…いいや!あげちゃえ!
これ、彷徨くん一人称でも楽しく書けそ。…いや、書くかどうかは…どうしたらいい?(おいw
遠カタ最終章第1話が100投目だとか言っといて…大ウソになりました。スミマセン。。
こんなのが100コ目でいいのか自分!…まぁいいか(^^ゞ
甘々を書こうとするとつい、暴走したくなる…w
もっと、と思ってるのは、彷徨くんより私かもしれません(笑)