作:どらむかん
キーンコーンカーンコーン
外は雨。
学校の終業の合図とともに学生たちはそれぞれ帰路につく。未夢や彷徨もその中の一人である。
玄関口にはたくさんの人が話し合い笑いながら雨の中を歩いていく。
最初に教室から出てきたのは未夢だった。
「あぁ!雨!さっきまでは振ってなかったのに…傘もってきてないよー。」
今日に限ってななみちゃんや綾ちゃん先に帰っちゃったし…
未夢は空を見上げため息をついた。
「お前…何やってんだ?そんなところで。」
聞きなれた少し低音の心地の良い声が聞こえ振り返ってみると彷徨や三太といったおなじみの人が今から帰ろうと準備をしている。
「彷徨!三太君!」
「やっほー!光月さん!どうしたの??」
「えっと、その〜…傘忘れちゃって…。」
「お前。どうせ、今朝のニュースとか見てなかったんだろ。昨日からずっと雨だって天気予報言ってたぞ。」
「それなら今朝ひとこと言ってくれればいいのに!」
「聞かれなかったし?」
「か〜な〜た〜!!」
「じゃあ、光月さん傘ないんだったらこれ貸そうか?俺もう一本あるし。」
今まで彷徨の顔を見ながら眉間にしわを寄せていた未夢が三太のほうへ視線を向けた。
「え!?そんな悪いよ!!」
「いいって!傘ないんでしょ?俺は置き傘があるからさ。」
「う…うん。ありがとう。」
未夢は恥ずかしくなり顔を赤らめたあと申し訳ないように傘を受け取った。
三太と未夢の手が重なる。
そんな様子を見ていた彷徨は未夢の顔を見ながらどんどんと暗くなっていく。
一切彼女から目を離すことはなかった。
「じゃあ、彷徨帰ろうぜ!」
三太が彷徨へ声をかけ彷徨は三太に目を向けた。
彷徨のその表情を見た瞬間三太は凍りついた。蛇ににらまれた蛙のように目をそらすことができない。雨はいまだ止まず、未夢以外の人は雰囲気を察したのか他の人はそそくさと帰っていく。
やべぇ〜、彷徨…超怒ってないか?俺なんかしたっけ??
「三太。」
「はい〜!」
「今日は俺、こいつと帰るから。三太はすまんが一人で帰ってくれ。」
「へ?」
そういうなり未夢の持っていた傘を奪い三太へ突き返した。
「同じ家に帰るんだから俺が入れていけばいい話だろ?」
彷徨は三太へニコリと笑い未夢へ向き直る。
未夢は現状を把握できずただ彷徨をみた。
「おい、早くいくぞ!」
「え?あ…ちょっと!ちょっと待ってよ!」
彷徨は未夢の手を引っ張りながら無理やり自分の傘に入れ玄関を出ていく。
彷徨の顔は確認できなかったが、未夢はつながれた手を見ながら頬を赤く染めていた。
喧嘩している声はどんどん小さくなっていきその姿は見えなくなっていく。
「あいつのあの顔初めて見た…。もし、光月さんに何かしようものなら俺彷徨に殺されるな…。」
ポツンと玄関口に残された三太は二人の姿が見えなくなるまで動けなかった。
昨日雨が降っていたので衝動的に書いてしまいました(笑)
年齢とかは書いてないのでこれが起きたのがいつなのかはご想像にお任せします。
皆さんの萌えるシチュエーションで楽しんでくださったら幸いです(^_^;)
前回作『夜。』にたくさんの拍手ありがとうございました!
すごくうれしかったです。文章がおかしかったり言葉がおかしかったりすると思いますが
これからもがんばって行きたいと思います!
(次はシリーズものとか、彷徨視点の作品が書ければいいなー)