作:さくら
ジリジリと肌を焼く灼熱の太陽、
ムンムンした空気、
夏、真っ盛り…
「あつーい」
未夢は縁側でグダーッとうちわを煽いでいた。西遠寺にクーラーはない。扇風機はあるが縁側までは届かない。
暑さをしのぐ方法はうちわしかなかった。
「ルゥくんはいいな〜、プールがあって」
「きゃーい」
ルゥはビニールプールで水遊びをしていた。
できれば未夢も一緒に遊びたい。だがここで水着になる勇気はなかった。
「あれ、ルゥはプールに入ってるのか。いいな〜」
彷徨がひょっこりと顔を出す。
「彷徨帰ってたんだ。おかえり〜」
「あぁ、ただいま」
今は夏休みだが彷徨はちょくちょく学校に行っていた。夏休み明けから3年生からの引き継ぎが本格的に始まる。その会議のためだった。
「お前は入らないのか?プール」
彷徨の思わぬ言葉に未夢はボンッと顔を真っ赤にさせた。
「なっ何言ってんのよ!////入るわけないでしょ!/////」
「ふーん」
「かっ彷徨こそ入れば?」
「俺はいい」
しれっという彷徨にムッときた未夢が言い返そうそしたその時、別の声が聞えた。
「あ、お二人ともここにいたんですね」
2人が声のする方を見るとトテトテとワンニャーがやってきた。手にはスイカが乗ったお皿。
「スイカいかがですか?」
「やったー!」
ムッとしていたことを忘れて両腕を上げて喜ぶ未夢。
しかし、皿の上を見て腕をゆっくりとおろした。
「あれ?スプーンは?」
「スプーンですか?」
「うん、種をとるスプーン」
「そんなのいらないよ」
彷徨が横から口を出す。
「じゃあどうやって種を取るのよ」
「こう食べればいいじゃん」
そういうと彷徨はスイカを一口かじり、種をプッと飛ばした。
「えー汚いじゃん」
「大丈夫だって。な、ワンニャー」
「はい〜」
ワンニャーも同じように種を飛ばす。
未夢はそんな2人とスイカを交互に見る。
「よっしゃ!ワンニャーより遠くに飛んだぞ!」
「うぅ〜くやしいですぅ〜」
それからは種の飛んだ距離を競い合う二人。
種を飛ばすのは抵抗がある。でも、とても楽しそう。
未夢はとうとう我慢ができなくなり、彷徨とワンニャーと同じようにスイカを食べだした。
そしてプッっと種を飛ばす…予定だったが、種は上手く飛ばずポトッと皿に落ちた。
「ククッ、アハハハハハ」
その様子を見ていた彷徨が笑いだす。
「ちょっと、何よ!」
「だって、超下手くそ〜」
未夢はぷぅっと頬を膨らます。そしてもう一口スイカを食べる。
(彷徨のバカヤロー!)
そう心の中で叫んで飛ばした種は彷徨が飛ばしたところまでとはいかないが、かなり遠くまで飛んだ。
「うふふ、どうよ!私だってやろうと思えばできるのよ!」
「わぁ〜、未夢さん上手いですね〜」
「でしょでしょ〜」
1回飛ばしただけで得意げになる未夢。その様子を見た彷徨がまた種を飛ばす。
今度飛ばした種は今までで一番遠くに飛んでいった。
「うわぁ!彷徨さんすごいです〜」
ワンニャーの言葉にニヤッと笑ってピースをする。
「わ、私も頑張ればあそこまで飛ばせるもん!」
「どうかな〜。未夢ちゃんには難しいんじゃない?」
「負けないもん!」
そういって飛ばした種は足元に落ちた。
「まだまだだな〜」
そういって彷徨は未夢にお手本を見せるように種を飛ばす。コツを掴んだのか種はキレイな弧をえがいて飛んでいった。
「うぅ〜」
未夢も頑張って種を飛ばす。
しかし何回やっても彷徨には勝てない。
気がつくと、縁側の近くはスイカの種だらけだった。
「そういえば、この種ってどうなるんだろう?」
「さぁな。もしかしたらスイカになるんじゃないのか?」
「それは楽しみですねぇ〜」
ずっと黙っていたワンニャーが笑顔で言った。
「来年もまた、皆で食べれるかな?」
ポロッと未夢が呟く。
いつ皆がバラバラになるかわからないこの生活。1年後のことは想像がつかない。
皆でスイカを食べる。一見普通のことだが、そんなことも4人にとっては大事なことだった。
「食べれますよ、きっと。その時はルゥちゃまも一緒に食べましょうね」
「きゃーい」
「そうだな、皆で食べようぜ」
3人の言葉に未夢は微笑んだ。
「…うん」
そしてまた種飛ばしは再開された。
種を飛ばす2人と1匹。その様子をルゥはプールの中で「キャッキャ」言い楽しんでいた。
いつの間にかスイカを食べることよりも種を飛ばすことに夢中になっていた。
もう、さっきまでの暑さは感じられなかった。
夏と言えば何だろう?と思い思いついたのがスイカでした。
某舞台でスイカを食べるシーンがあって、その時の種飛ばしがすごく印象的だったのでこのような話にしてみました。
ちょっと文章の繋がりが変ですね><種飛ばしで楽しむ3人が書きたかったのです。
ちなみに私はスイカ大嫌いですww小さい頃は好きだったのですが、小6の時突然食べれなくなりました(^_^;)