作:夢羽
ちょっと背伸びしても、届かない――… 背伸び
あと、ちょっと。 わたしは右手を戸棚に向かってのばした。 ほんと、あとちょっと。 精一杯の背伸び、まっすぐ伸ばした手。 「あ」 届いた、と思った。手が、触れて。かたんと、戸が開いて。 わたしが取ろうとしていた“あれ”が真っ逆さまに落ちてきた。 「えっ?」 つるっと、滑った。
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