HERO

作:夢羽


最寄り駅の改札ぬければ
いつもよりちょっと勇敢なお父さん Daddy!
その背中に愛する人の Wowwow 声がする―――…


by
FUNKY MONKEY BABYS






朝。



「いってらっしゃいっ」

わたしは彷徨の背中に向かってそういいきると、盛大にくしゃみをした。

涙目になったわたしを、彷徨は心配そうな顔で振り返った。

「だいじょうぶだって…」

はっくしゅんっ。

なんとも説得力のない言葉をわたしは言う。

ただ、くしゃみがとまらない。

「おまえ、どこからかぜをもらってきたんだよ…」

あきれた声で、彷徨はいった。手をズボンのポッケにつっこんで。

…べっと舌を出して。

「わ、わるかったわねっ」

はくしゅっ。

わたしはくしゃみと共にぷいとそっぽを向く。なんか、かっこ悪いなあと思った。


空はきらきらと輝いていて。今日、外に出たら、気持ちよかっただろうなっ。

ふう、とため息をつく。

かぜなんて、ひきたくなかったな。


あ。

突然、ひらめいた。

かぜの日くらい、甘えてもいいよね。きっと。

そう思ったわたしは、ぐっと手を握り締めた。

「ねえ、彷徨っ」

「ん?」

振り返った彷徨に向かって、口を開く。

「帰りに…プリンを」

かってきてほしいなっ。

続けたはずなのに。言葉にならなかったのは。


くらっ。

視界が、真っ暗になって。一歩踏み出した先には、―――何も、無く。

体が、傾いて。

がたんっ。

けたたましい音と共にわたしは玄関ですべって落ちた。

目の前には冷たい床。

横にはわたしの靴。

「あいたたたたたた・・・」

ぱちっと目を開けて、頭をさする。

頭、打ったみたい。ぼんやりとした頭で考える。

はっくしゅっ。

こんなときにもくしゃみを忘れないわたしは、自分でもすごいと思う。

「か、彷徨っ」

ふと気づけば、彷徨を呼んでいて。

―――だけど。周りには、誰も、居なくて。

ちょっぴり、良かった、と思う。

きっと、学校にいったのよっ。彷徨は。

ここに居合わせたら、たぶんこういうだろう。

「「ばーかっ。だからおまえは目がはなせないんだよっ」」


突如重なった声に、恐る恐る顔を上げた。

座り込んだわたしの真上には、氷の入った袋を持つ、彷徨がいた。

「かな…たっ」

どう、して?と聞こうとするけれど。その前に。

冷たいものが、頭の上に乗せられた。

冷たい氷と、おっきな手。

「ほら」

彷徨の声と共に差し出されたのは、手で。

ぱっと見ると、彷徨は顔を背けてて。

きっと、わたしの顔は真っ赤。

そっと、その手を握って。

立ち上がると、頭がずきずきして。

わたしは氷を手でおさえた。

「ありがと」

たった一言で、思いは伝わる。

「おまえっ、次からはそんなまね、すんなよ」

横向いたまま、舌をぺろっとだして、彷徨は言った。

むっ。

「わかってるわよっ!」

心の中を、見透かされそうで、見透かされてそうで、たまらなく、悔しい。

「歩けるよな?」

「だいじょーぶっ」




一息ついた頃、彷徨がふと時計を見た。予鈴5分前。

―――遅刻。

「やべっ、いそがねーとっ」

あわてて彷徨は靴を履く。その背中に、わたしは言う。

「帰りに・・・」

「わかってる」

ふっと微笑んだ顔。わたしはこくりとうなづく。

「家で暴れんなよ」

余計なひとこと。

「わかってるっ!…いってらっしゃいっ」

いつの間にか、くしゃみはとまった。



あなたはきっと、西遠寺を出ても勇敢で。

その背中に、わたしはずっと声をかける。




   

                
――――あなたはきっと、わたしのヒーロー。   









はじめまして、こんにちは。夢羽でございます(汗。

こんなのでよければ、どうぞ楽しんでいってください♪

一応、ルゥくんが帰っていってしまった後の設定です。

…では、またお会いしましょう!







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