作:マサ
受験で離れていた分のリハビリに一本書きました。
未夢視点でどうぞ。
季節は、すっかり春になった。
あたしにとって、春は特別だ。
おそらく、普通の人よりも。
いろいろなことが始まったのが春で、
終わったのもまた春だった。
しかし、人のつながりとは不思議な物だ。
それぞれが、違う道を歩くと思っていた。
ところが、である。
「なんで、会っちゃうのかなぁ…。」
ぼそっとつぶやくのは、
目の前に、別れを告げたはずの2人がいるからだ。
中学生、そして高校生と、
クサい言葉だけど「青春」って呼ばれる時期に、
図らずも一緒に暮らすことになったメンバーたちは、
通っている場所こそそれぞれ違えど、
直径2q圏内の大学に集ってしまったのだ。
「まあ、お互いに、進路は明かさなかったからな。」
彷徨の意見には、確かにうなずかざるを得ない。
受験戦争が本格化した頃、
あたしたちの雰囲気は、さすがにギスギスしていた。
具体的に言えば、それまで何があっても同じ部屋だった、
誠大とあたしが、部屋を分けるぐらい。
そこに来た知らせが2つ。
ルゥくんたちとの、本当の別れが訪れること。
そして、あたしたちの親が、
日本へと帰還することだった。
もう少し、とそれぞれから託されたのはちょうど3年前。
時の早さを、痛感させられる話だった。
「やっぱり最後は、笑って送ろうよ。
そして、笑って別れようよ。」
誠大の提案に、異論は無かった。
卒業式から3日後の朝。
その日を別れにしようと決めた。
でも、やっぱり笑ってなんてできなかった。
それぐらい、あたしたちは特別な関係だったのだ。
友達と言うには深すぎて、
恋人と言うには違いすぎて。
ちょっとした、運命共同体になっていた。
ルゥくんやワンニャーが号泣するのはわかっていたが、
あの誠大が、目に涙を浮かべたのだ。
「俺が言い出しっぺなのにな…。」
しゃくり上げながら言っていたが、
こういうときの涙は、連鎖する。
あたしが、そして彷徨までも泣きじゃくった。
「今、俺たちが思ってることは1つだと思う。」
誠大が、あたしと彷徨へ、交互に視線を送る。
「…当ててみる?」
「面白そう。」
「んじゃ、せーの、」
「「「ルゥ(くん)たち、元気かな…。」」」
「…だと思った。でも、これはこれで、」
「良いのかもしれないな…。」
「…かもね。」
見上げたら、ちょうど桜が散る所だった。
オット星に、桜はあるのだろうか。
あるのなら、いつか、あたしたちも見てみたいな…。
実は、この話には続きがあった。
この6年の間に、オット星の科学はさらに進歩した。
具体的に何があったかって言うと、
地球との行き来がものすごく容易になったのだ。
そう、月一ペースで、ルゥくんたちがやってくるようになったのだ。
あたしたちの縁はこれからも、
よっぽどのことが無い限り、
切れそうには無いようだ。
全く悪い気はしないけど。
いやあ、ずっと書いてないと、ここまで鈍るかってぐらいきつかったです。
これが、自分が書いてるシリーズのエンディングになれるように、
一つの指標にしたいと思います。