こわいもの 作:美緒

(この作品は、2002年12月から2003年1月にかけて開催された「Little Magic Da!Da!Da! Special Christmas」の出品作品です)

今、俺にはおそれているものがある。
それに出会う前はこれといって恐いものなんてなかった。
この12月になるまでは・・・

「彷徨〜。出来た・・出来たよ〜」
ギクッ
台所のほうから声が聞こえる。
声の主、未夢の声は喜びに満ちているように思えたが
今の俺には喜びなんてものは無い。
なんたってこわいものがすぐ側にあるからだ。
そう考えると俺の頭の中はパンク寸前。
出来ればそのこわいものなんてみたくない。

未夢の足音が聞こえるにつれて体中に緊張の糸が走る。
俺のいる部屋の前で足音がぴたっと止まる。
その瞬間思わず、ドアを見る。
気のせいだろうか?今一瞬そのドアが地獄へ行く扉に見えたのは・・
出来ればその扉は二度と開いてほしくない。
そう思っていてもドアは開く。

ガチャ

予想通り、未夢が俺にとってこわいものを持っていた。
それを見た途端、急に寒気がする。
もう拒否反応が出ていた。
そんな俺とはうらはらに未夢は機嫌がいいのか
ニコニコしている。

「ねぇ、彷徨。今回は上手く出来たと思うんだけどどうかな?」

持っている物をチラッと横目で見ながら今以上に微笑む。
今までこの笑顔を見たら例のものもなんでもないと思えていたが
今はそんな事は思えない。ただ、自分の無事を祈るだけ。

「ねぇ、どう思う?このケーキ・・」

そう俺のこわいもの(苦手なもの)は未夢の手作りケーキのことだ。
未夢にはそんなことを言ったら悪いと思うけど、あのケーキは人一人を殺せそうなぐらい
まずい。前なんか、砂糖と塩をまちがえてすごくしょっぱいケーキを食べさせられたりした。
あれは、本当に死ぬかと思った。そう考えるとキリが無い。
きっと、誰もがその恐怖のケーキを一口でも口に入れたとしたら
俺のような気持ちになるのはまちがいないだろう。
そもそもなんで未夢がケーキを作るようになったというと
本人曰く 「クリスマスまでにケーキ作りをマスターして俺の誕生日のクリスマスの日に手作りケーキを作って
俺にプレゼントする」
と、言っていた。そのせいで未夢は毎日のようにケーキを作るようになった。
ひどい時は一日に二回も作るときがある。
よく飽きもせず作れるものだ。それは感心する。
そしてその未夢のケーキを食べる役がこの俺。
誕生日の日に未夢の手作りの物をもらえるのはいいけど
気が気じゃないのは確かだった。

「ちょっと聞いてる?どうしたの?ぼーっとしちゃって・・」

不思議そうに俺の顔を覗いてくる。
ボーっとはしてないんだけどなぁ・・・
ふと思いテーブルを見るとティータイムの準備が出来ていた。
けど、用意されているのはいつも一人分。(俺のだけ)

「ボーっとしてねぇよ・・ところで未夢。なんでお前はいつもケーキを作るのに自分で食べないんだ?
そんなんじゃ、自分ケーキ作りマスターしたかわかんないじゃん」

そう、未夢は一度も自分の作ったケーキを食べたことが無い。
俺は、未夢のケーキを食べるときはいつも平然さを無理してでも保たせているため
未夢は自分のケーキの味を知らない。

「食べたいけど・・・・」

食べたいけど・・?なんかあまり乗り気じゃないけどこのまま俺が話を上手く丸めていけば
もしかしたらあのケーキを食べなくて済むかもしれない。
よーし。このままがんばるぞ!がんばれ!俺!

「食べたいなら食えよ。我慢しないほうがいいぞ!ほら、食えよ。俺は今日はいいからさ・・」

机の上に置いてあるケーキを持って異常なぐらいの笑みを浮かべて
未夢に勧める。

すると彷徨の不自然な笑顔を不快に思い未夢は泣きそうな目で俺を見て言う。
「ねぇ、私の作ったケーキをそんなに食べたくないの?」


ギクッ 一瞬、体がビックと反応して下をむいてしまう。
なんで今日はそんなに鋭いんだ?

俺の反応を見て未夢が問い詰める。
「やっぱり、私のケーキ食べたくないんでしょ?」

「なんでそうなるんだよ?」
下をむいていた顔を気づかれないように平然さを保って上げて見ると
泣きそうな目で未夢が見てくる。目線が痛い。

「だって、いつもケーキを食べる時、必ずといっていいほどため息ばっかりつくじゃない・・
おいしくないならおいしくないって言ってくれればいいのに・・」

正直に言えば食べなくていいのか?
けど正直に言うと・・未夢が怒るよな・・・
究極の選択。どうすればいいんだろう・・?

「・・・・・」
「何も言わないって事は私の言ったこと当たってるんでしょ?」
未夢は怒りながら言う。
「だから違うって・・そんなんじゃな・・」
「もういいわよ。彷徨には頼まないから・・もう私寝るね。
お休み」
未夢は彷徨が言い終わる前に怒り口調で言って部屋から出て行った。
彷徨はただ唖然とその場に座って未夢が部屋から出て行くのを見ていた。









未夢は自分の部屋で作ったケーキを見ながらボーっとしていた。

ひどいよ・・彷徨。食べたくないなら食べたくないって言ってくれれば
良かったのに・・・けどやっぱり私が
ケーキを作るなんて無理なのかな?
けど、どうしよう・・・このケーキ。
もったいないなぁ・・・せっかくおいしく出来たと思ったのに・・
明日、学校に持っていってみんなに食べてもらおうかな・・?
そんなことを考えているうちに深い眠りについてしまった。







翌朝。彷徨が起きた時には未夢の姿はなかった。

「なんだよ。先に行ったのか?」
やっぱり昨日の事怒っているんだろうな。
ちゃんとすぐに謝っとけば良かった。
なんで俺あの時、謝れなかったんだろう?
言葉が出なかったのだろう?
謝っとけば良かった。
彷徨はそんなことを考えながらも学校へ行く為の準備を始める。

いつもと同じ道を通って行く。
今日は未夢がいないせいか学校までの道のりも物凄く長く感じる。
どうしてだろう?いつも横で笑っている未夢がいないから・・?
早く未夢に会って昨日のことを誤りたい。
けど、何って未夢に謝ればいい?
未夢は許してくれる?
もし許してくれなかったらどうすればいい?

そんなことを考えているうちに学校に着いた。
なにやら学校は騒がしい。
男子がざわざわと騒いでいる。
どうせくだらないことだろうと通り過ぎようとするとその群衆の中に今、一番
会いたい人がいた。未夢を見ると手には昨日のケーキらしき物がある。


もしかして、未夢の奴こいつらの誰かにあのケーキをやるのか?
なんかそう思うと腹が立ってくる。
いつもなら食べたくないのだけど今は他の奴になんか未夢の手作りケーキなんて
やりたくもない。自分でもすごい矛盾していると思う。
けど、嫌だ。そう思うと自然と体は動いていて
いつの間にか未夢の手をつかんでいた。

「彷徨・・?」
未夢はびっくりして彷徨を見上げている。
他の男子達もいきなり彷徨が現れたのでびっくりした表情で見ているが
今の彷徨にはそんな事どうでもいい。
そして未夢が手にしていたケーキを一気に口に含む。
それは瞬間だった。

「ちょっと彷徨・・?どうしたの?食べたくなかったんじゃなかったの?」
未夢は不思議そうに見ている。

「そんなこといってないだろ・・?」
ケーキを一気に口に含んで苦しそうに言う。なぜだか味がしない。
味より一気に口に含んだことのほうが苦しくって味どころではないらしい。
それはそれでいいかもしれない。
けど俺は本当にいい加減だ。最初は食べたくなかったのに他の奴に食べさせたくなくて
あんなこと言うなんて・・昨日の俺は「食べたくない」って絶対言っていたはずだな・・

「えっ?」
未夢はさっきよりよりいっそう目を見開いてみている。
相当びっくりしているようだ。それは無理は無い。昨日
何も言ってくれなかった彷徨が一気に自分のケーキを食べてしまったから・・・・
一方、未夢の手作りケーキを食べようとたかっていた男子も
彷徨にブーブー言っている。それを見て彷徨は弁解をする。

「これはもともと俺のために作られたケーキだったんだから
俺が食べてもなんの問題も無いだろ・・?」

未夢の肩を自分のほうに引き寄せて特に「俺のため」の所を強調して大きな声で
他の男どもに見せつけるように言う。
未夢の顔はトマトみたいに真っ赤だ。
そんな未夢を見て笑ってしまう。
そして、一番言葉に伝えたかったことをやっと伝える

「未夢。昨日は本当にゴメン。クリスマスまでにちゃんとケーキ作りマスターして
俺のためにおいしいケーキ作ってくれよ」
「うん!」



結局、未夢はクリスマスになってもケーキ作りの腕は上がらず
彷徨はあのまずいケーキを食べることになる。
そして彷徨はケーキのせいで胃を壊すことになる。。

「俺って本当に馬鹿だったかもしれない・・」

ここまで読んでくださってありがとうございます!!
小説とか生まれて初めて書くものでどうやって書いていいのか?
もうさっぱりでした。全然意味が通っていません。
本当すみません><
小説を書くのは本当に難しいです。
国語が苦手な私にはちょっとって感じで・・・
本当に書くのに苦労しました。
もう駄目文でお恥ずかしい限りです。
こんなのを投稿してしまってもいいのだろうか?と
思います。本当にすみません。

                                 美緒

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