カレッジライフ

作:久保真理



大学に入学して、からのお話。









  










「へー!未夢ちゃんて、彼氏いるんだー!」

「え、あ。・・・うん」


「もう!春香ってば、ここ食堂よ!」

いきなり大声を上げたハルちゃん。

聞こえてしまうと恥ずかしい話で、由梨ちゃんがけん制をしてくれた。



「あー。ごめんつい。だって、興奮しちゃうでしょ〜」

ぺろっと舌を出す姿は本当に可愛い。



「春香と一緒にしないで」

「酷いよ由梨」


「ふ、ふたりとも・・・ちょっと、ね」

火花をバチバチ言わしているような二人をびくびくしながら止めに入る。



「だって、この未夢に彼氏がいるんだもん」


「このって・・・」

私に彼氏いたら変なの?

「まぁ、そうだけど。実際未夢は可愛いじゃない。ナイトがいないと、ね」


「な、ナイトなんて、そんな・・・」

見なくても、きっと私の顔はもう真っ赤

うつむくけど、耳が赤いのもしっかり見えているだろうな


「で、今日はその彼氏とデートなんでしょ?まだいかなくていいの?」

由梨の言葉に、私は急いで腕時計を見た

とたん蒼白。



「あ、遅刻〜!行かなくちゃ!」


「どこに?」


「だから彷徨の・・・へ?」



ガタンと立ち上がると、何故か目の前には彷徨の姿。

「ななな、なんで、ここに・・・」


「こないから、探しに。食堂で話し込んでることくらい容易に想像つくし?」


どうどうと食堂に立つ彷徨。


「じゃなくて!!ここ、女子大!!」


「まー知ってるけど。」


キャーキャーとピンク色の声が食堂を占める。

それは、大学に入ってからもっとかっこよくなったから。


彷徨はうっとおしそうだけど。


「だって、バカ未夢は話し始めると時間を忘れるもんなー?」

「なによ!彷徨だって、本読み始めちゃったら時間も忘れるし、周りもまったく見えなくなっちゃうじゃないっ」


「でも、いつも待ち合わせとかに遅れるのはどっちかな?」

「うっ・・・」


いつも遅れるのは基本的に私の方

けど、そこまでいわなくてもいいじゃない!


ぷぅっと頬を膨らませて彷徨をにらむ。



「ってことで、行くぞ。」

「ひゃ」



私の腕をつかんで、食堂を出ようとすると目の前に壁ができた。




「あなたが、未夢の彼氏さんね?」

「・・・そーだけど?」


彷徨は道を塞がれて少し不機嫌そうな声

目の前にはハルちゃんと由梨ちゃんが楽しそうに笑って立っている

「ちなみにドコ大?」

「お隣」


くいっと横を指す。

そう、お隣の理系大学に彷徨は通っている。

私は児童学科のある女子大に入学した。




「ふーん。本当にナイトって感じね」



「てゆーか、夫婦?」

「もう夫婦だよね」



「あ、あのお二人さん・・・?」

なんだか、いやーなよかんがするの、私だけでしょうか?



「未夢、明日。みーっちり聞かせてね」


「うん。隅々まで。」


二人は笑いながら道を空ける。


明日、学校休みたいな・・・













「もーっ隣じゃない。待っててくれたっていいじゃんよ」


むぅっと彷徨をにらむけど、彷徨はこっちに見向きもしないでバイクをいじる



「はいはい。」

その声と共に、私の頭にはヘルメットがかぶされる。

彷徨とおそろいのメット。




「行くぞ」


ぽんぽんとメットごしに頭をぽんと叩かれる

「・・・うん。」


卑怯、だよ。


それだけで、機嫌直しちゃうんだもん。





いつものように後ろにまたがる。


向かう先は西遠寺


今日は星矢くんが来る日










ルゥくんが西遠寺に現れて、去っていって


もう5年になる。




いまでも、思い出すたびに涙が出そうになる。


それを我慢して、彷徨の腰に回している手に力をこめた。


ぽんぽんと、なぐさめるように叩かれた手。


大丈夫って言ってくれてるみたいで、なんだか安心するの。















「やっほー!彷徨くーん未夢ちゃーん!」

西遠寺の下につくと、入り口から星矢くんの声がする。



「私、先に行ってるね」

「あぁ」


登りなれた階段を登って、鍵を開ける。

「どーぞ」


おじさんはママたちとアメリカに住んでいて、今は西遠寺に住んでいるのは私たちだけ


だから、星矢くんとか他の宇宙人が来ても、頑張ってごまかさなくていい。



「ただいまー」

玄関から、彷徨の声が聞こえる。


「お帰りなさいっ!」


さっきまで一緒だったけど、それでも迎えるために玄関に走る。



「・・・おおげさ」


「なっいいじゃないよっ」

べーっと舌を出すと、頭をくしゃってなでられた。


これは、テレやな彷徨の『ありがとう』

「えへへ・・・」


「ほら、行くぞ」


「うん」


差し出された手を掴んで一緒に居間へ向かう。




両親がいないけど、




二人だから、寂しくない。


二人だから、暖かい。





「・・・・あのさ、ラブラブしてるとこ申し訳ないけど、また頼みたいんだ」



「・・・今度は?」


「シャラク星より少し遠いところにアポロ星ってところがあるんだ。そこの・・・」




ルゥくん、元気にしてますか?


私たちは、今も一緒にいて、時々地球に来る宇宙人のお手伝いをしているよ。



「・・・また長引いたりしないだろうな?」

「え、何言ってるの彷徨くん!」

彷徨のじとっとした目に、星矢くんは明らかに焦ってる。



「この前だって、短いって言われて、かなり長かったぞ!!」



「だから、気にしなきゃいいじゃん。本人もそう言っていたでしょ?」


「できるかっ!どこで見られてるかもわからねーんだぞ?!」




・・・・・うん。



きっと私たちは、一番の理解者なんだけどね。


ただ、いつも二人でいるから、たまにお客さんが来ると、ね。




それでも、手伝ってあげたいって気持ちは、彷徨も私も一緒だよ。


だって、ルゥくんみたいな子をだしたくないもん。


「ってことで、明日辺りに来るからよろしくー!」

結局、星矢くんはそのまま逃げて行った。


「未夢、買い物に行くぞ」


「あ、うん。」

ほら、ね?

彷徨はやっぱりやさしいの。


スーパーに来て、一緒にカートを押す。

真っ先に彷徨が目指したのはやっぱり野菜売り場で手に取ったものはやっぱり


「えー。カボチャー?」

「なんか文句あるかよ。」


「たまには違うのも食べたい。」


私はぷーっと頬を膨らませた。


「しかたねーな。カボチャ一つにしてやるよ」


「わーい!」

彷徨はカボチャを二つとか買うこともまれじゃないから、

カボチャを一つにしてくれることも珍しかったりする。



帰りも、袋に買ったものを入れていくけど


重たい荷物は、ほとんど彷徨が持ってくれたから、私の荷物は取っても軽い。


ほらね。

なんだかんだいって、彷徨はやさしいの。















「あー!」

髪の毛を拭いていて、私は大変なこと(?)を思い出した。


「どーしたんだよ」

「あ、明日!根掘り葉掘り・・・」


慌てすぎて言葉に出来ない。


何はなせってのよ!

デートとは言いがたいし・・・


下手な嘘は、私つけないし・・・


「ふぇ?」


考えにふけっていると、トンと肩を押されて私は仰向けになった。


目の前に見えるのは、ニヒルに笑う彷徨の表情。


えーっと?


「じゃ、嘘つかないですむよーに。事実をつくろうか」


「え、あ。か、かな、た・・・・」

私がパクパクとしてる間に、ゆっくりと彷徨が覆いかぶさってきた―――













「で?で?」

興味しんしんで身を乗り出してくる。


「で?って言われてもー」



何もいえないよ!


昨日のことを思い出して、顔が熱い。



絶対、真っ赤でしょ。




確かに、嘘はつかなくて良くなったけど!!


いや、なんにもいえないけど


まぁ顔に出てるだろうケド






彷徨のばかっ


いじわるー!!!








END














久ぶりのお話書いてみました。

大学生になってからのお二人のお話です。

タイトルはもうそのまんま。なんのひねりもなくてすみません。苦笑



書いてある通り

未夢は児童学科のある女子大へ進み
彷徨は、医療系の学科がある大学に進みました。

それでも、彷徨は未夢が心配で心配で。
何かあっても大丈夫なようにお隣の学校に行ったのでした。

なんか、結局未夢のノロケ満載だった気が・・・笑

ちょっとしたオチをつけたつもりだけど、どうでしたでしょうか?

私は、なんかなまった気分です。

誤字、脱字なり
変なところがあったら教えていただけるとうれしいです。

        (久保真理2010,5,17)


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