【バレンタインの準備】7つのお題

1 自信は無いけど、張り切っちゃう

作:あかり




2月にはいって、節分が過ぎる頃から、オンナノコはみんなちょっとソワソワしてる。私だって、フワフワした気持ちになってる。



だって、『バレンタイン』が近いから。



はじめて彷徨に渡したチョコは、準備したものがペポに食べられちゃうっていうアクシデントがあったから、お店で売っているものだった。そう、「同情チョコ」とか「おせっかいチョコ」なんて言ってあげたんだった。
その次に渡したチョコは、離れて暮らすようになって、気付かされた気持ちを本人に知られるのが怖くて、手作りのものはあげられなかった。だから、迷いに迷って、結局、お店で買ったチョコをあげたんだった。
去年までのことを思い出して、ちょっと心が切なくなる。あの時は片思いだったから。
でも、今年は違う。
「彼氏」になった彷徨に渡す初めてのチョコレート。今年は、手作りのものを渡そうって決めてた。中学のとき、美少年コンテストで3冠をとった彷徨は、高校に入ってからもやっぱりすごくもてる。背も伸びて、声も低くなって、ちょっと・・・ううん、すごくかっこよくなった。多分、今年もたくさんチョコをもらうんだろうなって思う。でも、だけど、やっぱり今年は頑張りたいなって思う。





彷徨に、私の気持ちを伝えたいから。





「俺は、未夢が良い。ほかの誰でもない、未夢が良いんだ。」
告白は、彷徨からだった。すごく嬉しかったのに、あの時、私は「私でいいの?」って返事をしちゃった。彷徨は、一瞬、すごく怒ったような顔をして、燃えるような眼差しを向けてきた。私は、彷徨の怒ったような顔に、「嫌われてしまったんだ」って思ってうつむきそうになっていたのに、その視線にとらわれて、目線がそらせなくて・・・。いつも、はっきり話す彷徨の口からこぼれ出たのは、少しかすれた、搾り出すように出された声で、「私がいい。」って答えだった。
まるで、全身に染み入るようだった。
私の「私なんかで」っていう思いで凍らせていた気持ちをジワリと溶かしてくれた。
「私だって、彷徨がいいよ。」やっとのことで出した声は、小さくてかすれた声でちっともかわいくない声だった。それでも、「良かった。やっと捕まえた。」って彷徨が小さく息を吐いて身体を包んでくれた。まるで、壊れ物でも扱うかのように、そっと。
あのときに、彷徨からもらった嬉しい気持ちを私はまだ半分も返せていない。
だから、今年はちゃんと自分で作ったチョコレートを渡しかった。市販のものを選ぶ時だって、すごく気持ちをこめて選んだし、一緒に添えたカードに文字をつむぐときには緊張で手が震えてしまうくらいだった。でも、やっぱり私が彷徨のことを想って作ったものではなかったし、あの時は片思いだと思って選んだものだった。自分の気持ちが彷徨に届いたらどんなにいいだろうって思って。それでも家族のように温かい関係がくずれることも怖くて、結局、自分の気持ちはカードには書けなかった。今年は、彷徨と思いが一緒になって初めてのバレンタインだから、ありったけの想いをこめたものを作りたいなって、そう思った。
決心して、きゅっと手を握って、よく行く本屋さんの入り口に立つ。


―カタン―


音を立てて開いた扉の目の前には、お菓子作りのコーナーができている。女の子達が何人か見つめているその先には、ピンクに彩られたチョコレートの絵や写真が並んでいる。
ふと思い浮かぶのは、交代ばんこのご飯当番で私が当番のときの彷徨。「上達したな。」って言って、笑って私が作った料理を食べてくれる。そうして、決まってクシャリと髪をなでる。あの言葉と、笑顔が嬉しかったから、色んな料理を作ることが楽しくなった。1週間後に、作ったものを手渡したときあの笑顔がもらえるならきっとすごく嬉しいだろうなって思って、胸の奥がほわりと温かくなった。
「彷徨、どれが一番好きかな。」
零れ落ちたのはそんな言葉で、つい口からこぼれてしまった思考に頬に熱が集まる。周りの子達も、自分の大切な誰かを思っているみたいで、私がつい口に出してしまった言葉には気付いていないみたい。ほっとして深呼吸を一回。



選ぶこと1時間。私にぴったりの一冊が見つかった。
喜んでくれるといいな、そう思っただけで頬が緩んでしまって、西遠寺までの階段を弾むように登ってしまった。


Happy Valentine!
今回【バレンタインの準備】7つのお題に挑戦させていただきました。
お題サイト様以下のとおりです。ありがとうございました。
サイト名:OSG 管理人:ハルヤ様 アドレス:http://defg.web.fc2.com/o/


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