作:あかり
5 ヤバイこの夢、良すぎて誰にも言えない♪
「未夢の好きな花を植えよう。」
「ほんと?ありがとう。」
ああ、これは夢だ。夢の続きだ。いつか見た夢の・・・。
花壇で土を耕している男女2人組み。後姿だけど、わかる。よく知っているから。自分とそして、未夢だ。少し背が高くなった後みたいだ。クスクスと楽しそうな少し高めのでも柔らかな未夢の声と一緒に暖かな風が一瞬吹いた。
目を閉じたのは一瞬。場所は、あぁ、母さんが使っていた部屋だ。窓が開けられて、扉も全開でポカポカ陽気が部屋の中に漂っている。そして、部屋のほぼ真ん中にあるのは小さなベッド。ルゥにも少し似ているでも、かわいらしいオンナノコの赤ちゃんがすやすや眠っているのが見える。
「あ、笑った。この顔、彷徨が笑ったときにそっくりだね。」
「そうか?俺は、お前に似てる気がするぞ。」
ベッドの前にさっきの二人がいる。柔らかな目元、弧を描いている口元、なんて幸せそうに笑っているんだろう。「元気に大きくなるんだぞ。」少し低くなった、自分の声。こんな風になるんだろうか、そんなことを思ったとたんまた風が一瞬強く吹いた。
小さかった女の子が歩き出したり、おしゃべりを始めたりどんどん未夢そっくりに大きくなっていく。目の前にいる未来に描く自分もそして、未夢も確実に年を重ねていった。増えていくのは笑い皺と楽しい思い出たち。手は必ず繋がれていて・・・。
最後はただ真っ白な世界に軽やかに、手を取り合って向かう二人が見えた。
不思議と悲しいとは思わずに目が覚めた。はじめに目にしたのは、柱に身体を預けている未夢の幸せそうに笑う寝顔が見える。ラジオから流れる物語の幸せな終わりを示す曲名の音楽はまさしく夢見たとおりの内容で。そして、未夢と自分の手は絡むように繋がれている。
この胸に締め付けるようにあるこの温かさはもうなんともいえなくて・・・。言葉にならないこの幸福を分かち合いたくて、まだまどろみの中にいる未夢に唇を寄せた。
6 気にするな!・・・俺も見た夢、悪かったから
ひどく夢見が悪かった。巨大なみたらし団子に押しつぶされる夢。しかも、妙にリアルでみたらし団子の匂いまでついていた。寝苦しかったのは、ルゥが胸の上に載っていたからだったみたいで、探しに来たワンニャーに「いけませんよ、るぅちゃま。」なんていわれながらも楽しそうにフワフワ浮かんでいた。
日曜の起きる時間としては少し早い時間だったけど二度寝をする気にはなれなかった。洗面台の前であったのは、未夢。少し顔色が悪い気がする。
「おはよう。大丈夫か?」
「あ、彷徨おはよう。うん、大丈夫。ちょっと、へんな夢見ちゃって。目、覚めちゃった。」
そう言って、未夢が話した夢は俺が見た夢と似ていた。なんせ、みたらし団子に追いかけられて、追いつかれたら下敷きにされたというのだから。せっかく1月2日の朝だというのに、二人とも変な夢を見てしまったもんだ。
「どうせなら、ケーキのほうが良かったー。」
何が、どうせなのかよく分からなかったけれど、とりあえずは自分も似たような夢だったんだと話すと「彷徨は、カボチャなら良かったのにねぇ。」とやっぱりよく分からないことを言っていたけれど、「そうだな。」と答えておいた。
準備をして、「今日は団子は食べたくないな。」なんて二人で軽口をたたきながら向かったのは居間。顔を洗ったら朝ごはん。いつものとおりだ。
けれど、普段どおりじゃないものがあって・・・。居間に近づくにつれて強くなるのは甘辛く煮たしょうゆの香り。未夢と顔を見合わせて、扉をひらくと大きな皿に山盛りになったみたらし団子。まだ温かいらしいそれは湯気をたてている。
「おはようございます。お二人とも。今日のおやつはみたらし団子ですよ。待ちきれなくて作ってしまいました。」
ひどく嬉しそうなワンニャーの声とそしてその笑顔。
「夢の続きじゃないよね?」
呆然とした表情でつぶやいたのは隣にいる未夢。夢だったらいいのにと思いながら、ちょうどいい位置にあった未夢のほっぺをつまんでみたら、「痛いじゃない!!なにするのよー!!」と2倍返しの反撃が返ってきたから、困ったことに夢じゃないことが分かって、今年はじめてのため息はやたらと深いものになってしまった。
お題に挑戦させていただきました。
【初夢】6つのお題
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