【おうちのなかで】 100のお題

W お題(7.8)

作:あかり


007 布がはみ出した押入れ


お天気のいい昼下がり。朝からポカポカ陽気で、布団を干すのにもってこいだったから、庭まで運んで干したそれ。お日様のあったかさを十分吸い込んでふかふかのポカポカになったお布団は持つだけでも気持ちよくて、お昼寝したくなっちゃう。
すごく心引かれる誘惑だけど、ダメダメと首を振って我慢する。今日の洗濯当番は私で、掃除当番の彷徨に見つかってしまったら、お小言を言われるに違いないから。
気を取り直して、「よいしょ。」と布団を持ち直す。3人分の布団を往復して運ぶんだから気合を入れないとね。
とりあえずの自分の分を運び終わって、ルゥ君とワンニャーの分の布団をもって部屋に入る。そろそろルゥ君はお昼寝の時間だからと頼まれていたように布団を引く。ルゥ君は、たぶん、パチパチ手をたたいて喜んでくれるんだろうなと思ったら、ほほが緩んできちゃう。掛け布団も運び終わって、ちらり横を向いてみたら、目の前の押入れから出ているのは花柄の布のはしっきれ。一瞬、「?」が浮かんだけれど、さっきももかちゃんが「ルゥ、今日はかくれんぼにちまちょ。」といっていたことを思い出す。これじゃバレバレだよと思ってつい笑ってしまう。
ルゥ君のことを「かれち」とか言っちゃうようなおませさんだし、私のことを「おばたん。」なんていって小憎らしいところもあるけど、やっぱりちっちゃな女の子だ。
クルリ部屋を一回り、近くに鬼さんのルゥ君はいないみたいだったから、『コンコン』ってふすまをたたいて「ももかちゃん」と声をかけてそーっとふすまを開ける。空けた先にプーっとほほを膨らませている様子が見える。「おばたん、見つかっちゃうじゃない!!」おおいに怒っているけれど、内緒話するようにこしょこしょ言っているものだから全然迫力がない。笑っちゃったらきっともっと怒るだろうから、ぐっと我慢して、ちょいちょいってひらひらを指差す。「スカート、はみ出してるよ。」そう伝えると、あっとびっくりしたような顔をして恥ずかしそうに「アリガト。」と告げられた。「女の子同士の秘密ね。」と内緒の形に指を作ると一緒のポーズをしてくれて、にっこり笑いあった。


結局その後ルゥ君はももかちゃんを見つけられなくて、「ルゥ、あたちのかちねー。」なんてごきげんでルゥ君に抱きついていた。パチリ目が合うと、それはうれしそうに笑っていたから、「おばたん」なんてけしからないことをいうけれど許してあげることにした。











008 ペアの食器たち


目の前にあるのは新しく買った2組のペアのスープ皿。斜め前にうつむいていすに腰掛けた未夢がいる。
「断りきれなかった・・・。夫婦じゃないのに、違うって言ったのに・・・。」
聞こえてきたのは小声で呪詛のような響きの言葉。ため息しか出ないとはこういうときに使うんだな。なんて頭の片隅で思う。


今日はいいお天気で、たまには4人で出かけようかといつもの広い公園に行ったら、蚤の市をやっていた。昔ながらのお茶碗もあれば、雑貨屋で見かけるような、未夢が好きそうなヨーロッパ風の雑貨を扱っている店もあった。そして、本日11月22日は数字にあやかって「いい夫婦の日」っていうらしい。ペアでいかがですかなんて声がちらほら聞こえてた。そういう行事とは縁が遠かったし、ふーんと思って、みるともなしに食器を眺めていたら、横から爆弾発言が飛んできた。
「仲がいいパパとママでうらやましいな。」
にこやかに悪気なく笑って言い放ち、ルゥを撫でたのはその店の店員さん。「これかわいいな」なんてつぶやいていた未夢は、一瞬きょとんとした顔をして、1拍おいて、真っ赤になった。もう、湯気が出るくらい。
「ち、ち、ち、違うんですー!!これはパパとママにと思ってみてたものなんですー。」
大慌てで否定したつもりでも、夫婦ではないことを告げていないから、店員も「お姑さんにですか?でしたらこちらのほうが。」なんて言っている。もう、苦笑いしか浮かばない。
どうしたものかと困っていたら、いつものようにタイミング悪く近所の奥さんに化けたワンニャーが戻ってきて、「お姑さんじゃないってことは、こちらがお母さんですか?」そう誤解したままご家族で2ペアずつどうですかとすすめてくれたのはスープ皿。最初はワンニャーも渋っていたのだ。
「みたらし団子ならまだしも、お皿はいっぱいありますから。」
そういって、ちょっとわけのわからないような断りもいれていた。それがいけなかったんだけど。
「あ、よろしければこれ差し上げますよ。」
一枚上手だったのは店の人で、団子屋さんの試食会の参加権を渡されて、なし崩し的に買うことになってしまったのだ。ワンニャーの弱点はみたらし団子に決定した瞬間だった。未夢もなんとかいりませんと断ろうとしたら、まあ、案の定断りきれなかった。
「実は私、親の反対を押し切って結婚してから両親とは疎遠なんです。だから、あなたがうらやましいな・・・。」
なんて身の上話を切り出されてしまったから、情に弱い未夢は「買います!!」って勢いよく返事をしていた。そんなこんなで、2組のペアのスープ皿はしっかりラッピングされて、未夢の手に渡された。
「夫婦円満の秘訣は、妻が頑張ることだと思うんですよ。一緒にがんばりましょうね。」しっかり手を握られてブンブン手を振り回す店員に「違うんです」と必死に言っている未夢がなんだか哀れになったので、腕をつかんで店員から引っぺがした。でもとかなんとか言っていたけど、「早いとこ帰るぞ。」と押し通した。とんだ茶番劇だと思ってしまう。店員の話が真実にしろ、うそにしろ。
なんとか帰ってきたのはついさっき。目の前にはスープ皿と表情の暗い未夢。しょうがないなと思う。未夢のほうがこういうのは得意なのだけど。
「今日はかぼちゃのスープにするぞ。みんなで食べたら上手いよな。」
「彷徨が食べたいだけじゃない。」
「未夢は食わなくてもいいんだぞ。」
「意地悪!!でも、せっかくだから、今日買ったスープ皿使おうね。」
他愛ないやり取りの合間に未夢の頬には笑みが浮かんでいて、なんとなくうれしく思う。「そうだな。」と返事をして、スープの準備をすべく、袖をめくった。











お題に挑戦させていただきました。
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