【おうちのなかで】 100のお題

T(お題1.2)

作:あかり


001 テーブルとイス


4人がけのテーブルは、いつも席が2つぽっかりと空いていて、普段誰かが一緒にこの席につくことなんてなかった。だから、テーブルに座って食事をとると、どこか寂しい感じがした。親父も、そんなふうに思ったんだろうか。親父と二人で暮らしてた時には、めったに使うことはなかった。

「るぅちゃま。はい、あーん。」
「ワンニャ、あー。」
「るぅくん、おいしい?よかったねー。」
「あーい。」
「彷徨、ご飯食べないの?卵焼き、私が彷徨の分もらっちゃおっかなー。ワンニャー、いつもおいしいけど、今日の卵焼きは特別おいしいよぅ。」
思い出に残されたのとは異なる風景に、今更のように違和感を覚えて少しぼんやりしていたらしい。目の前にあるおいしそうなおかずは、かなり残りが少なくなっている。しかも、その少なくなったおかずに未夢の箸が伸びていたから、ひょいとさらって口に運んだ。ほんのり甘い卵焼きの味が、優しく口内に広がる。たしかに、未夢が言っていた通り、いつもよりおいしく感じる。まぁ、おいしくないご飯がワンニャーから差し出されることなど今まで全くなかったけれど。
「あー、彷徨ひどい。いらないんじゃなかったの?せっかく、私がもらおうと思ったのに。いいもん、最後の一個もらっちゃうから。」
横からさらわれたのが悔しかったのか、そう言って、未夢は大急ぎで最後の卵焼きを自分の口にほおりこんでいた。口に含んだとたん、ほわりと笑って「おいしい。」なんて幸せな笑みを浮かべているのが横目に見えた。まあいいかと思いながらも、少し悔しかったから、「太るぞ。」と昨日体重計に乗って騒いでいた未夢を思い出して一言言ってやった。『太ってる』なんて思ったことはないけれど。
「なんてこと言うのよー。せっかくおいしく食べてたのに。彷徨のバカー!!」
ダイニングに広がったのは横に座っている未夢のプリプリ怒っている声。目の前には、様子を見てキャッキャと喜んでいるルゥと「お二人はいっつも元気ですねぇ。」なんて爺くさいことを言っているワンニャーがいる。もう見慣れた光景なのに何故だろう、体の中心が暖かなもので満たされた気がした。










002 DVD観賞


「あぁ、もう、なんでこのお姫様は王子様の気持ちに気づかないんだろう。ジリジリするー。王子様も素直じゃないなー。このお姫様のこと大好きなの周りにはバレバレなのにー。」
今日は休日で、居間でのんびり4人で過ごしていた。未夢が見たいといって借りてきたDVDがテレビでは流れている。ファンタジー映画で、どこかの国の物語、魔法が使える設定の一国の姫と王子が世界を守るために冒険に出たお話・・・のはずだった。あおりの帯を見る限りでは。でも、未夢にとっては、メインのお話よりも二人の行方が気になるみたいでしょっちゅう何か口に出している。
「未夢って、ドラマとか映画とか入れ込んでみてるよなー。」
「うん。だって、そのほうがなんかハラハラドキドキして楽しいじゃない。彷徨は違うの?」
「そりゃ多少はあるけど、未夢のは入り込む度合いが違うっていうか。」
「いいんだもーん。あ、いまいいとこだから続きは後からね。」
そういって、また食い入るように画面を見てる未夢をみていると、知らずふぅとため息がこぼれた。画面の中では王子がピンチに陥った姫を必死にすくおうと手を伸ばしている。未夢は「わぁ、かっこいい!!がんばれー、王子様。」なんて声を上げている。
テレビに夢中の未夢になんとなく面白くないなと思う。未夢は楽しんでみているというのに。

「彷徨さん。」そう呼ぶワンニャーの声にふっとわれに返る。
「買出しに言ってくるのでルゥちゃまをお願いします。未夢さんはちょっと今お楽しみみたいなので。」
苦笑してそうつぶやいたワンニャーからルゥを預かると、ルゥは「パンパ」とうれしそうに笑顔を向けてきた。無邪気な笑顔に少し気がまぎれたけれどもやもやする気持ちはやっぱり残っていて・・・。


『なんでこのお姫様は王子様の気持ちに気づかないんだろう』そう言った未夢の言葉をそっくりそのまま返してやるよと心の中でつぶやいた。


お題に挑戦させていただきました。
【おうちのなかで】 100のお題

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サイト名:OSG 管理人:ハルヤ様 アドレス:http://defg.web.fc2.com/o/


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