キュウ

作:あかり







「丸いなぁ。」
「丸いねぇ。」
「丸いですぅ。」



今日は満月。まだまだ秋は遠い季節だけど、『今日はお天気が良いので、きれいな満月が見える月夜となるでしょう。』といったニュースのお姉さんの言葉につられて、皆で縁側に座てる。月見をする中秋の名月を見る日はお団子をお月様に奉げてその後、みんなで食べたりもすることもあったっていう彷徨の話を聞いてワンニャーはもう背後にキラキラが出てるんじゃないかっていうくらいいい笑顔になって喜んでた。お月様を見ることよりもお団子に目がいっちゃったのは、ワンニャーらしいと思うし、私だってお団子好きだから、できれば食べたい。だから、秋でもないけど、お団子が一緒に置かれてるのも、まぁ、当然かな。
「ワンニャーは本当に団子好きだな。」
「はい。みたらし団子がいっとう好きですけどあんこを乗せた白玉のお団子も好きなんですぅ。」
パクパクという音が聞こえそうなくらいワンニャーはどんどんお団子を食べてた。それは幸せそうに。彷徨は若干呆れ顔だけど、私は、ワンニャーの幸せそうなその顔に私も食欲が刺激されてきちゃった。
「ワンニャーの作るお団子おいしいもんね。もう一個いただきまーす。」



口に広がるあんこの味はやさしくて、それにできたてだから温かい。クッキーやケーキももちろん好きだけど、和菓子のほんのりした甘さもいいなぁって西園寺に来てから気付いた発見だった。それに、ワンニャーはどちらかというと和食のほうが口に合うみたいで、よく作ってくれるものはおおかた和食の煮物とかで、おやつはもちろんクッキーよりお団子、ケーキよりお団子って感じで大分和食に口が慣れてきちゃってきた。おまけに、彷徨も和食のほうが好みとなると、2対1では分が悪いから、自然洋食よりも和食に食生活が傾くのだと思う。私は、家では、パンにスープが朝ごはんだったけど、こっちにきてからはご飯にお味噌汁が基本で、最初のころこそ慣れなかったけど、もう大分慣れた。それに、ワンニャーが気を利かせて、たまにパンにスープって言う日もあるから、朝ごはんのローテーションもいろいろあって飽きないからちゃんと全部食べてから学校に行ける。それに、多分、みんなそろって朝ごはんを食べれるのが全部食べれる理由かなとも思う。家族そろって食べるご飯はやっぱりおいしいから。



「皆で食べるからもっとおいしいね。」
ごっくんとまぁるいお団子を飲み込んで、隣に座る彷徨にも声をかける。彷徨もパクンとお団子をひとつ食べたところだったから。
「・・・そうだな。うん、うまい。」
一瞬びっくりしたようにぱちくりしていたけど、なんとなく力がぬけたみたいに笑っていうから、私も笑ってしまった。でも、やっぱり意地悪なところは健在で、あっというまに、にやって笑って「まぁでも、誰かさんはあんまり食べ過ぎると団子みたいに丸くなっちゃうかもなぁ。この前も体重計の前で叫んでたみたいだし。」なんていうから、ちょっと腹がたって、ほっぺをつねってみた。そしたら、「いひゃいぞ。」ってはっきり言えなくてほにゃほにゃ返事を返してきたから、怒っていたのに、なんだかおかしくてやっぱり笑ってしまった。
「彷徨、変なしゃべりかた。いひゃいって、いひゃいって言ったよ。」
「未夢が頬を引っ張るからじゃないか。そんなに笑うな。」
「だって・・・おかしいんだもん。赤ちゃんみたいなしゃべり方、彷徨がすると・・・やっぱり、なんかおかしい。」
「なんなんだよ。」
「引っ張ったのは彷徨が意地悪ゆうからじゃない。怒ったのー?やっぱり、いひゃ言っていったのもおかしくないかもー。おこちゃまー。」
「怒ってないぞ。いつまでも引っ張るお前のほうがお子ちゃまじゃないか。」




いつかの夜ように言い合って、ワンニャーに「お二人とも、痴話げんかはもうそれくらいにしてください。」といわれて、声をそろえて反論するまであと5分。そんな私たちを見て、ルゥ君が楽しそうに笑うのはいつもこと。
丸い月の光はやさしく西園寺の縁側を包んでいた。










同好会同好会9年目と言うことでしたので、9にひっかけて『キュウ→球→月』のこじつけです。月は西園寺には欠かせないものなので、許していただけると嬉しいです。



[戻る(r)]