作:北条 愛淋
今日は4月1日、未夢にとって大事な日。
未「はぁ〜…」
ここでため息を吐いたのは西遠寺未夢、今日はエイプリールフール、未夢にとって大事な日。
大事と言うのは、勝ち負けを争う大事な大事な勝負の日なのだ。
自分の旦那と会ってから10年近く。
毎年毎年、いままで旦那に騙され続けてきた。今日は“私が勝つ!”という意思は強いものの、中々嘘が思いつかない。
去年の時は、未夢が『近所の奥さんの家に赤ちゃんが生まれたんだって!』と言うと、旦那は『なら、何か持っていかなくちゃな』と言ったので、つい、『えっ!』と声を出してしまった、なので嘘だと言う事がバレたのだ。
未「あ〜もう思いつかない!テレビでも見よーっと…」
そこらにあったリボコンを手に取り、テレビと付ける。
チャンネルを変えているうちに、ふとボタンを押す手が止まる。
未夢が見ていたのは、恋愛ドラマ。
『私、もう貴方とはいられない!』
『どうしてだ?!』
『好きな人が他に出来たの!さようなら』
テレビに映っている女の人はそう言うと走って何処かへ行ってしまった。
そんなのを見ているうちに、未夢はふと考え込んだ。
しばらくして、
未「…これだ!よーっし、見てろよ〜、打倒彷徨!」
そう、未夢の旦那は彷徨。
まさに10年越しの愛。
―ガラガラ。
引き戸が開く音が玄関から聞こえる。
共に、彷徨の声が聞こえた。
彷「ただいま…」
未夢は待っていましたとでも言うかの様に、出迎えた。
未「おかえり、彷徨!ご飯出来てるけど、食べる?それともお風呂先に入る?」
鞄を置きながら、う〜ん…と考えると彷徨はニヤリと笑う。
彷「お前が食いたい。」
未「なっ///」
予想どうりの未夢の反応に、くっくっと肩を揺らしながら笑う。昔から変わらない、そんな反応を見て楽しむのが毎日の日課の様なものだ。
未「あ…騙したわね〜!!」
ぷぅっと頬を膨らまして拗ねる未夢。
彷「んー…否、騙したつもりは無いんだけどな。」
未「ばかぁぁぁあ!!」
精一杯叫んで、スタスタとキッチンに入っていく。
彷「ホント、昔から変わんねーな…さて、機嫌取り戻しに行きますか…」
しばらく独り言を呟いてから、キッチンへ向かった。
キッチンに入ると未夢が手際良く鍋の中の料理を煮ていた。
彷「未夢〜」
未「・・・・・・・・」
さっきの事を根にもっているのか、未夢は無視をする。
彷「・・・・・・・・」
未「・・・ひゃぁっ!」
未夢は気がつくと彷徨の腕の中にいた。
未「な、何よ〜///」
彷「今日さ、花小町と会って、一緒に昼飯食った。2・人・で。」
彷徨は“2人で”の部分を強調して言った。その言葉にピクッと反応する未夢。
いくら中学生時代仲良かった友達でも、自分の旦那と“2人で”というのは不快感を得るもの。
未「へ、へぇ〜。そ、それは良かった・・・じゃない〜」
苦し紛れに一生懸命出した言葉がこれ。
彷「それにしても、花小町美人だったぜ〜」
未夢の反応があまりにも普通だったので、もう一度、言った 彷徨。
未「そ、そりゃ…ねぇ〜。クリスちゃん、中学の時も美人だったし。」
その後、未夢は、いい事を思いついた。
未「ぁ…ねぇ!彷徨。」
急に明るくなった声に驚く彷徨。
彷「ん?」
未「今日ね〜、買い物に行って、スーパーを出た後に、男の人とぶつかっちゃったの。」
未夢は、彷徨がした様に、“男の人”を強調した。
未「それでね、スイマセン!って声かけたら、『荷物持ちましょうか?一人じゃ大変でしょう?』って言って、荷物を持ってくれて、西遠寺まで送ってくれたの!やさしい人よね〜♪それに、すっいごくカッコよくって〜、知的な人だったわ〜…」
彷「へぇ〜」
あまりにも彷徨の反応が普通だったので、不思議に思い、顔を上げる未夢。
未「かな…ふっ…ん…」
未夢が顔を上げたのと同じタイミングで彷徨は口付けをした。
未「…っ…はっ・・・・・んっ…ふぁ…はぁ、はぁ・・・」
お互いの唇が離れると、未夢は足の力が抜けた様で、床にヘナヘナとへたばりこんだ。
すると同時に彷徨が未夢の胸に手を触れた。
未「彷徨?…なっ///ちょ、何してるの?///ん、ゃぁ///」
真っ赤になって必死に抵抗する未夢。
だが、手を止めようとはしない彷徨。
未「ふぁっ///か、彷徨〜、さっきの話嘘だから、や、やめてよぅ///」
その瞬間、彷徨の手が止まった。
えっ?と思い、伏せていた顔を上げると、
ニヤリと笑った彷徨がいた。
未「彷徨?」
彷「俺の勝ち☆」
未「へっ?…あぁぁー!!!」
彷「未夢って嘘つくの下手だよな。いつもどうり話している様には聞こえるけど、表情見てたら、苦しそうだもんな!それに、朝からため息ばっかついてるし『あ、また今年も考えてる』って思うと、おもしろくってさ。」
未「そんなぁ…はぁ〜今年も負けた・・・。彷徨ばっかりズルイー!!!」
地団駄を踏む未夢。いかにも悔しいというのが顔に出ている。
まぁ、素直な証拠か…と彷徨は、ふと思った。
彷「そういや、花小町との事だけど嘘だぜ?」
未「え?本当?」
少し嬉しそうに言う未夢に対して、
彷「ああ、嘘。なぁ、未夢、ヤキモチ妬いたんだろ?」
ニヤニヤしながら言う彷徨。
未「なっ///ヤキモチなんて妬いてないもんっ!」
彷「本当か〜?それにしては顔が赤いけど、もしかして図星だったり?」
未「え?顔赤くなってる?やだ〜、なんで顔に出ちゃうのよ〜」
未夢は顔を手で覆いながら言うが、言った後に“しまった!填められた…”というような表情をしていた。
彷「まじ分かりやすいな、お前。昔っから変わってねーじゃん。」
未「“昔っから”って、私、昔から顔に出てた?」
彷「出てた出てた。特にコーヒー飲む時とか、苦いって、もろ顔に出てたぞ。」
未「うっ…子供の時は苦いって思ってたけど、今は平気だもん!」
意地を張る未夢に彷徨はマグカップを渡した。中にはコーヒー。
彷「ほらっ、今は平気なんだろ?俺の前で飲み干してみろよ。」
未「うぅ〜…」
彷「あれ〜?未夢ちゃん、コーヒー飲めないの〜?子供っぽ〜い」
ふざけた口調で挑発する彷徨。
未「の、飲めばいいんでしょ!飲めば、」
挑発に乗って、彷徨からマグカップを奪い取ると、一気に飲み干す。
彷「ほ〜ぅ、いい飲みっぷり!」
未「ぷはぁっ…」
空になったマグカップを、ダンッと音を立てて机の上に置く。
しばらくすると…
未「…ぅぁ゛〜苦い…っ…」
彷「ほ〜ら、やっぱり変わってねぇじゃん。」
未「しょ、しょうがない事なの!苦手なもんは苦手なんだから!」
彷「未夢の場合、苦手なもんって言ったら、料理とか料理とか料理とか…」
・料理・をなんども連呼する。
未「ぅ〜…料理ばっかりじゃない!」
彷「仕方ねぇじゃん、それしかねーんだから…。あ!もう一個あったぞ、苦手なもん。」
未「何があるの?」
彷「料理。」
未「彷徨のバカーーー!!!」
彷「さーって、飯食うか!腹減った〜」
未「ちょ、待ちなさいよ〜」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、夜。
お風呂上りに縁側に未夢が座り、月を見ていると彷徨が来た。
彷「早く寝ろよ。」
未「むー!また子ども扱いして…いつまでするつもりよ!」
彷「ん?死ぬまでだけど、」
未「即答ですか…でも、彷徨の場合、死んじゃってからも言い続けそう…」
彷「かもなっ、」
未「ねぇ…一つ言っていいかな…?」
急に静かになる未夢。
彷「どうした、急に…」
未「あのね…」
彷「ん?」
未「コーヒー飲んだせいか、寝れないんですけどっ!」
彷「あ、今気づいた?」
ニヤッと笑う彷徨。
未「ワザと飲ましたわね〜!!」
彷「ああ。あんなにあっさり騙されるとは思わなかったけどな。」
舌を出して笑う彷徨。
未「どうしてくれるのよ!」
彷「安心しろ。今日は寝させるつもりないしなっ」
未「へっ?」
彷「さぁ未夢ちゃん。行きましょうか?」
未「行くって何処に?夜だよ?」
彷「俺の部屋に。」
彷徨は、そう言うと未夢をお姫様抱っこして、部屋へと入っていった。
未「ちょ、彷徨〜///」
ここから先、どうなったのかは皆様のご想像で…
あー…描くのに照れた照れた…
夫婦になってからも、バカップルって感じなのを描いてみたくて…
大人になってからもエイプリールフールって、なんかいいって思いも混じってるんですけど…ね…(汗)
こんな勝手な私を許してください。
これからもご愛嬌いただけると有難いです!では…