いつかは…

作:北条 愛淋



「うわ〜すごい雨…さっきまで晴れてたのになぁ…」
放課後、未夢は、誰もいない靴箱の所で言う。
「傘持ってきてないし…止むの待つしかないよね…」
近くのベンチに腰をかける。

―すっ

未夢の前に差し出されたのは傘。
差し出した人は誰だろう、と思い顔を上げると
「あ、彷徨…」
「これ使え。俺は、これから委員会だから。」
「え、いいの?」
「いいから貸してるんだろ。」
「あ、そっか。ありがとう!彷徨!」
満面の笑みで礼を言う未夢に、赤面した彷徨は赤くなった顔を見られない様に、背を向けながら歩いていく。
その前に一言。
「知らねーおっさんについて行くんじゃねーぞ。」
彷徨にとっての“気をつけて帰れ”という言葉。
「むっ!また子供扱いしてー!」
「俺にとっちゃ、お前はまだ子供だ。んじゃ…」
舌をぺロッと出して、姿を消していく。
そんな彷徨の背を見送りながら、自分にしか聞こえない声で…
『ありがと…』
未夢は彷徨から借りた傘を開くと、西遠寺へ向かった。


「ただいま〜」
「おかえりなさいませ〜。あれ、その傘は?」
「彷徨が貸してくれたの。」
「そうなんですか。彷徨さんも優しい所ありますね〜。未夢さん、お風呂沸いてますよ。」
「わ〜一番風呂だ〜♪」
未夢はスキップをしおながら、お風呂へ向かう。
「あれ〜?確か彷徨さんは傘一つしか持ってなかったような〜…」
玄関に一人残されたワンニャーは呟く。


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「ただいま…」
しばらくして彷徨が帰ってきた。
「おかえりなさいませ〜って、彷徨さん!びしょ濡れじゃないですか〜!」
「風呂入ってくる…」
彷徨は靴を脱ぐと足早に風呂場に向かった。
「あ、今は未夢さんが〜…聞いてませんでしたね…はぁ〜、また喧嘩になりますかね〜」
ため息を一つ吐く。


「フンフン〜フフン♪」
鼻歌を歌いながら身体を洗う未夢。

―ガラッ。

「風呂沸いてるかな…」
彷徨が風呂場の扉を開ける。
「え?」
「あ…」
2人は顔を見合わせる。
「み、未夢!?///」
未夢は慌てて手で大事な所を隠す。
「ななななななんで彷徨が///…え、なんで彷徨びしょ濡れなの?服…」
未夢は彷徨の服を見て驚く。
「もしかして、私に傘貸したから?もしかして、傘差さずに帰ってきたの?!」
「え、えと…」

―バタッ

未夢の目の前で彷徨が倒れる。

「か、彷徨?!…ワンニャー!彷徨が…!」

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
「ん…ぅ…」
彷徨は、まだ思い瞼を開ける。
「あ、彷徨!」
隣から声が聞こえる。
「え、俺…風呂場にいて…」
「彷徨、風邪引いちゃったの、熱が8度もあるから安静にしててね。」
「そうか…」
「大丈夫?どこも痛くない?苦しい?」
似たような言葉を連呼する未夢。
「大丈夫、どこも痛くないし、苦しくも無い。」
その言葉を聞いて未夢の顔は明るくなる。
「はぁ〜…よかったぁ〜」
だが、すぐ顔が曇る。
「未夢?」
「彷徨…ごめんね…私が傘持って行ってたら…本当ごめんなさい!」
「気にするなって。俺が勝手に傘貸しただけだし。」
「でも…」
「俺が大丈夫って言ってるんだから、大丈夫だ。」
「本当?あ、そうだ、ワンニャーがね、前から、ももかちゃんの家にお泊りを招待されてたんだって、だから、3日くらい帰ってこないんだって。」
「そか。」
「だからね!私が彷徨の風邪治るまで看病するから!」
未夢は急に真面目な顔になって言い張る。
「それと、風邪引いてる間は私に何でも言ってね!なんでも言う事聞くから!」
「なっ///おまっ…俺も男なんだぜ?」
「彷徨が男の子なのは言われなくても見たら分かるって。それに、私のせいで風邪引いちゃったんだし…もしかして…逆に迷惑…?」
「迷惑なわけねーけど…じゃあ、覚悟しとけよ?」
「覚悟?まぁいいやっ!任せて!じゃ、お粥作ってくるね!」
未夢は、彷徨の部屋を出て行った。
「待て…って聞いてねーし…つか、あいつ、お粥なんか作れるっけ?」


しばらくして…


「彷徨〜」
未夢が再度部屋に入ってきた。
「できたよ…けど…」
「けど?」
「な、なんでもない!」
そして、差し出されたのは、茶色いもの。
「未夢、これは?」
「ミルク粥のつもり…」
「つもり?」
「見た目より味よ味!あ、あと、茶色いのは酢を入れすぎたからなの…ま、気にしないで!」
「気にしないでって言われても、食うのは俺なんだけどな…」
ブツブツいいながらもミルク粥を口に含んだ。
「どう?」
「まぁ、いいんじゃね?」
「そっか〜、ねぇ私にも味見させてよ!」
「ヤダ。これは俺の。」
「ぶ〜、別にまた作るからいいですよ〜っだ」
彷徨は、そんな未夢をよそに又、ミルク粥を口に含む。
「ほんっと彷徨って、いじわ…んぐっ!」
ミルク粥を未夢の口に詰め込んだ。
「まだ飲み込むなよ?」
「ふぁ、ふぁひ?(な、なに?)」
飲み込むなと言われて、どうすればいいか分からなくなる未夢。
「口移しで食わせて?」
「ふぁ、ふぁひひっふぇ!///(な、なにいって!)」
「なんでも言う事聞くって言ったのは、どちらさまで?未夢ちゃん?」
「う…」
未夢は半分ヤケになって口を合わせた。
自分で撒いた種だけあって、引き返すわけにはいかない。
―ドサッ
その反撃で、未夢が彷徨を押し倒す体勢になった。
「…っ…」
「ふぁ…こ、これで…十分?//////っていうか、私に何させんのよ!///」
「未夢…お前、この体勢でよく言えるよな〜」
「へっ?…あ…えと…」
「俺はこっちの方が、いいけどな。」
そう言うと、今度は逆に彷徨が未夢を押し倒した。
「ひゃっ…か、彷徨?///」
「もう一つお願いしていいか?」
「変な事言わないでよ!」
「分かってる。」
彷徨は未夢の耳元で囁いた。








「好きだ…」








突然の告白。
だが未夢は…。
「へぇ〜そっかぁ〜、よかったぁ〜」
未夢が喜んでいるので彷徨はホッとした。
だが、
「私の作ったミルク粥を好きって言ってくれたの彷徨がはじめてだったよ〜!」
「はっ?」
「はっ?ってどしたの?頼みごとって、コレでしょ?又私に作ってほしいって事だよね?」
「誰がミルク粥の事言ったんだよ、ったく。」
「ぅぇ〜…やっぱり美味しくなかった?」
未夢の目が潤む。
「ち、ちがっ!俺が言ってるのはお前の事で…」
「私?私がどうし…えええええ〜〜〜〜〜///」
「やっと分かったか…」
「そそそそんな訳ないって〜〜〜///」
「んじゃぁ…」
「ありえな…んっ…っ…はっ…」
「これで信じた?」
「・・・・・・・・・」
「未夢?」


  ふにぃ・・・


未夢が急に彷徨の頬を抓る。
「痛い?」
「いてぇ〜、つねるなって・・・」
「…ふぇ……っ…」
未夢の新緑色の大きな瞳から大粒の涙が溢れ出した。
「なっ、俺、なんかしたか?」
「夢…じゃ…ないんだね…っ…嬉くって…ふ…っく…」
「なんだ、そんな事か…夢じゃねーよ。だからもう泣くなって」
「ご、ごめ…んっ…。もう大丈夫!えへへ///」
「目瞑れ。」
「へっ?あ、うん。…っ…ん…」
唇をくっつけるて離した。
「もう!キスするなら言ってよ!苦しかったじゃない!」
「お前なぁ…目瞑れって言われたら普通わかるだろ〜」
「え?そうなの?そ、それより…この体勢///」
ふと、自分がどういう状況か気づいて未夢は赤面する。
「ん?」
「ん?じゃなくて、退けてくれないかな〜?」
「分かった、すぐ退く。っとその前に…」
「その前に?」
未夢に質問には答えず、未夢の頬にキスをする。
「ちょっ///」
それから少し顔を下へずらす。そして、顔が首の辺りまでくると
「…彷徨?…っ…く…はぁ…っん」
「………よしっ!浮気防止&虫除け完了っと…」
「なっ!浮気なんてしないわよ!でも…虫除けって?」
「なんでもねーよ。」
「それより、この跡消えないよ〜」
「消ささない。」
「なんでよ〜」


虫除けってのは、お前の周りをうろつく男を追い払うためのだよ。

次の日、彷徨は完璧に風邪が治り、学校では未夢が廊下を歩くと、沢山の男子がため息をついたのは言うまでも無い。


初めてだったんですけど…まぁまぁって所ですかね?
“浮気防止”と“虫除け”って…(笑)
まぁ、彷徨君の独占欲の強さの、あ・か・し♪ですよ☆+。*゜♪。
すいません、自分で言うのもなんですが、私ってウザすぐる!
これからも宜しくおねがいします。

ちなみに私の描く小説は未夢×彷徨の甘甘小説が多いですんで〜。
見てくださり有難うございました。


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