作:中井真里
夕日の向こうに見えるもの
イザークは夕日の向こうに何かを見つめていた。
明日はノリコと自分にとって大切な日。
長い間の約束が叶う日。
そう、明日は初めてノリコの世界に足を踏み入れる日。
何だかくすぐったいような複雑な感情が込み上げてくる。
「里帰り・・・か」
何度この日を願ったことだろう。
ノリコの生きた空気を
生きた証を感じ取りたい。
そして感謝したい。
自分とノリコを出会わせてくれたことに・・・。
「イザークぅ〜」
海の向こうから、ノリコの声が聞こえた気がする。
未知の世界に想いを巡らせながら、イザークは
ノリコの元に向かった。
THE END
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未来への祈り
「ノリコ・・・」
イザークは草原に立ち、物思いに耽る。
口にするのは愛しい少女の名前。
大らかで、温かくて、ちょっと抜けてて・・・なのに芯が強い。
自分の力を凌ぐほどに、強い意志。大切なものを守る、強い力。
イザークは眼を閉じて、過去の記憶を巡らせる。
自分の心を闇から解き放ってくれた。
自分のすべてを受け入れてくれた。
自分が生まれて来た意味さえも・・・・。
イザークは今の幸せを精一杯噛みしめて生きている。
それがこれから先も続くように祈りながら。
自分が、自分達の力で守っていこう。
そう、決心しながら。
この花束はその証。そして、新しい家族へ・・・。
「やっと会えたな・・・」
『イザーク・・・』
ノリコの声が心に強く響いてくる。
「もう行かなくちゃな」
そう呟きながら、走り出す。
第一声を胸に秘めながら。
(ありがとう。これが俺の本当の気持ち)
今も、そしてこれからも、
ふたりで築いていく未来へ・・・。
THE END
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乙女の落書き
のんびりした昼下がり。
ノリコはスケッチをしつつうたたねをしていた。
しだいに夢の世界に入り込んでいく。
(今日はね。うちのクラスに転入生が来たんだ。
長髪にバンダナの似合うとっても素敵な男の子・・・。
ってイザーク?)
イザークがうちの学校に転入してくるなんてどうしたの?
え?気まぐれ?面白そうだから?
でも嬉しいな。えへへ。
でもイザークのガクランって思ったより似合うなぁ。
うん。今日は一緒に帰ろう。
帰りに喫茶店に寄り道しちゃったりして。
そして、手を繋いで帰るの。
たまにはこんな時間もイイかな。
−ねえ、イザーク
イザークが見回りから帰ってくると
気持ちよさそうに寝ているノリコの姿。
そして、スケッチブックに書かれているのは
何か黒い服を来た自分・・・。
−何だろ・・これ?俺・・・だよな。
スケッチブックに描かれている自分の姿を、
まじまじと見つめるイザークであった。
THE END
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君を守る力
あいつに、ノリコに出会ってから俺の力は変わった。
以前では考えられない程の力
だけどひとつひとつの波動は優しく温かい。
こんな温もりは今まで一度も感じたことは無かった。
天上鬼である自分を受け入れてくれる力。
自分のすべてを優しく包み込んでくれた腕。
そして、涙・・・。
泣いてくれるのか? こんな俺のために・・・。
胸が熱くなった。ノリコ、俺はこんなにもお前を。
ごめん。二度とお前を泣かせたりしない。
この力は自分のために、大切なものを守るために
生まれた力なのかもしれない。
お前と共にある力。
お前と共に生きる力。
だから俺はもっと強くなければいけない。
お前を守るために。
そして、ふたりの絆を、幸せを守るために。
そして、いつの日か一緒に帰ろう。
お前の故郷に。
なぁ、ノリコ。
いつまでも、一緒に・・・。
THE END
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ノリコ×イザークより。
すべて拍手にて公開していたものです。
あまりに短いので超ミニミニ小話という形でまとめてみました。