作:中井真里
今日は、親友の結婚式。
この時期には珍しく青空が広がり
新しい門出に立つふたりを祝福しているようだった。
-木之本邸前
「ねえ、小狼くん。これ似合ってる?
目立ちすぎないかなぁ。
主役は花嫁さんなんだし」
「あ・・・あぁ。大丈夫だ。ほら行くぞ。
遅刻したら何にもならないからな」
小狼はそう言って右手を差し出す。
(似合ってるに決まってる)
思わずそう心の中で呟いてみる。
やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「うん」
さくらはニッコリ笑って手を握り返した。
(小狼くん、やっぱり優しい)
そう思いながら。
こちらは山崎邸の前。
「ちょっと、山崎くん。何してんの、遅れちゃうよ」
千春は準備に手間取っている幼なじみに
イライラした様子で、何度目かの声を張り上げる
「あぁ、ごめん。準備に手間取っちゃって」
山崎は頭を掻きながらそんな言い訳を並べて見せた。
「ちょっと、何企んでるの?」
千春は心配そうな表情をする。
「いろいろ準備があったからね。まぁ楽しみにしててよ」
「嘘だけはやめてよ。嘘だけは」
「分かってるよ。ほら、早く行かないと遅れるよ」
「あっ、待って〜」
相変わらずのふたりであった。
ところ変わって、大道寺邸
今日は利佳ちゃんの結婚式。
ビデオも衣装の準備も万端ですし
本当に楽しみですわ。
花嫁さんが取れるということもそうですが、
結婚式のブーケを可愛く握りしめるさくらちゃんの巻を
とりのがさないようにしなくては。
ふふ、腕がなりますわ。
さて、そろそろお時間。
さくらちゃんとの待ち合わせに遅れてしまいますわ。
朝の素敵なツーショットが撮れますように。
こちらも相変わらずである。
そして・・・。
「先生・・・じゃなくて、良幸さん」
「なんだ?」
「・・・・この呼び方慣れないな」
「すぐに慣れるよ」
ーリンゴーンリンゴーン
教会の鐘が鳴り、花嫁と花婿が出てくる。
あっという間に祝福の声に包まれる。
クラッカーが鳴り、花吹雪が散った。
利佳がぶ〜けを投げる。
夏の花で形作られたぶ〜けは
すっと、さくらの手に収まった。
赤い顔をしてそれを見つめるさくら。
それを優しく見守る小狼。
それを絶対に逃さないとばかりにカメラを構える知世。
いつもの攻防が繰り広げられていた。
どうか、お幸せに・・・。
THE END
□■□
「カードキャプターさくら」より、寺田良幸×佐々木利佳。
寺田良幸とは本編に出てくる、さくら達の担任の先生です。
アニメだと、教え子の利佳を熱っぽく見つめていた人です(笑)。
しかも他の生徒がいる前で。 アニメでは利佳の一方的な片思いと
評する方もいますが、私はアニメでも打ち明けあっていないだけで
相思相愛だと思っています。でなければ生徒の前で「俺に・・・?」とか
言ったりしません(笑)。
原作では真剣なお付き合いをしていて、婚約指輪まで
渡しています。しっかり彼女の将来も考えてるんだなと
思ったものです。そんな人を10歳にして捕まえた利佳も
かなりツワモノです。