君の名を

作:中井真里







「ヒカル」

「アキラ」




俺達は初めてお互いを名前で呼び合った。

シングルベットの中で肌を寄せ合う。

あのときには予想もしなかった瞬間が今ここにある。

囲碁という世界でライバルだった俺達が
こんな風にお互いを求め合っているなんて思いもしなかったから。

それだけ、俺も大人になったってことなのかな・・・。

そう言えば、佐為・・・どうしてるかな?

今では決して逢うことのない、
掛け替えのない存在に、ふと想いを馳せた。







「ヒカル」

愛しい恋人が自分の名前を呼ぶ。
何だか少し拗ねているみたいだ。

「また、僕以外の誰かのことを考えてただろ?」

「そんなわけないだろ」




図星だから言い訳出来ない。
まさか佐為の話をするわけにも行かないし。
でもアキラなら、分かってくれるかもしれない。
最近はそんな気持ちにも駆られている。




しばらくの沈黙の後、アキラが話を切り出す。

「ヒカル・・・きっとその人のこと、本当に好きだったんだね」

「どうして分かるんだ」

「だってとってもいい顔してるもの」

ああ・・・やっぱりアキラは分かってくれる。
俺はそう心の中で確信していた。




「いつか・・・いや。もう少し経ったら、話すよ」

そう言って、俺はアキラの唇に軽く触れた。

「うん。待ってる」

そう返事をすると、俺を愛おしそうに見つめる目の前の恋人は
次第に深い眠りに落ちていった。




でも話せるかなぁ・・・ふと思い浮かんだのが
白拍子姿の元・守護霊だなんて。
しかも男・・・。




横で小さな寝息を立てて眠っている恋人を見つめながら
俺は真剣に悩んでいた。






□■□






「ヒカルの碁」より、ヒカル×アキラ。
これもやおいってやつですね(笑)。
若気の至りということで。



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