君には敵わない

作:中井真里





「越前、そんなとこで何をしている」




朝。俺は外で簡単なトレーニングをこなした後
シャワーで簡単に汗を流した。バスルームを出ると
思わぬ人物が目に入ってきた。




(俺としたことが、少し取り乱してしまった・・・。)




「えへへ、俺も風呂に入ろうと思って」




照れくさそうに頭を掻く後輩、越前の
突飛な行動に惑わされて随分になるが
今日のようなことは初めてだった。




昨日、俺達は初めてホテルの一室で夜のひとときを過ごした。
肌が触れ合う感触を感じながら自分の中に芽生えた純粋で、
強い感情を目の前の相手に十分なくらいぶつけた。

そして迎えた朝・・・。簡単なトレーニング後の
シャワーの後の一幕である。





「どうした?急に」




俺はそう話を切り出すのが精一杯だった。
冷静を装いながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。




「あ・・・いや、だから・・・その」




可愛い後輩は、少し戸惑った様子で俺の方を見つめる。
そんな姿が可愛らしい。そんな感情を悟られないように
あくまで表情は冷静に保つ。




俺は越前の様子を見て、少しからかってみようと思い立つ。
そして、少し顔を強ばらせながらこう言い放つ。




”俺の風呂上がりを見てどうするつもりだ?”




が、少しおませな後輩は
まるで俺の悪戯に気付いているかのように
ニッコリと笑顔を見せる。
こんなときのヤツは本当に小悪魔だ。




「先輩の姿に見とれてました・・・」




そう言い放つと再びニッコリ笑う。




少しざわつく胸の音。
冷静な俺を惑わす。その笑顔。




俺はやっぱりコイツには敵わないなって思う。
今も、そしてこれから先も。
少し下がった眼鏡を手で上げながら
そんなことを考えていた。







THE END





□■□





「テニプリ」より。
これも昔書き散らしたものです。
いわゆるやおいってやつですね(笑)。
若手のいたりって事でお許し下さい。



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