作:中井真里
「ふふっ、これなら透くんをはじめ、
由希くんのハート鷲掴みは間違いないよ。
ボクって本当に天才だなぁ〜。ふふふ」
綾女はいつもの笑みを浮かべ
何かを妄想しながら完成したばかりの新しい服を眺めている。
そして、新たな企みを思い付いたのである。
「みんな、ボクの登場を待っていてくれたまえ〜」
そう叫びながら準備に取り掛かる。
「今夜、君のハートを頂きに参ります」(by 怪盗紳士)
草摩由希の元に届いたのは一枚の封筒。
その中には、こんなメッセージカード。
「・・・・・」
「由希くん、どうなさったのですか?」
透が手を翳してもまるで動こうとしない。
どうやら固まっているようだ。
由希は思った。自分の知り合いで、
こんな馬鹿馬鹿しいことをする人間はひとりしかいない。
これでも血を分けた兄だとは思いたくなかった。
「こんどは何を企んでるんだ?」
由希の心は不安でいっぱいになった。
これ以上、透の前で恥を掻きたくなかった。
その夜。突然部屋のふすまが空いた。
由希は机で本を読みふけっていた。
特に読みたい本というわけでもなかったが
兄のメッセージが気になって眠るに眠れなかったのだ。
「ははははは」
笑い声と共に、黒いシルクハットに黒い服、
赤いリボンがチャーミングな
怪盗紳士こと綾女が華麗にその姿を現した。
突然の笑い声に眼を覚ました透や夾が
由希の部屋に入ってくる。
が、その姿を確認した途端、石のように固まった。
「今度は何のつもりだ」
由希は兄の奇異な行動に半場呆れながら
強い口調で言い放つ。
「由希くん、驚いたかい?ボクは怪盗紳士にもなれるんだよ?」
こんなボクを君はきっと尊敬せずにはいられないだろう。
さぁ、さぁ、ボクの胸に飛び込んでおいで」
「いい加減にしてくれ。俺は寝たいんだ」
「ははははは、怪盗紳士から逃げられると思っているのかい?」
その後、綾女は逃げ回る弟を延々と追いかけ回したのだった。
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「フルーツバスケット」より。WEB拍手に公開していた小ネタです。
昔はこんなのも書き散らしてましたね(笑)。 あ〜や、大好きです♪