メロディ

作:中井真里



君と奏でるメロディは、ぎこちないけど心地いい。
最近特にそう思う。

何だか柄じゃないと思うけど。


君が笑っていれば、僕も幸せで。
あの頃の僕とは違う。


はっきりそう思えるから。




◇◆◇




「ねえ、週末空いてるかい?」
「空いてますわ」
「僕の師匠のマジックショーがあるんだ。一緒に行こう」
「それは、本当ですの?嬉しいですわ♪」


久しぶりのデートの約束に胸を躍らせる。
僕も彼女も修行で忙しくて、
最近なかなか会えないでいる。


僕はマジシャンの卵、彼女はデザイナーの卵
今は、それぞれの目標に向かって頑張ってる。


「楽しみだね」


僕がそう言うと、君は薔薇のように美しい微笑みになる。
それが嬉しくて、顔の緩みが止まらなくなる。




◇◆◇




当日、いつもの場所で待ち合わせ。


「おはよう」
「おはようございます。待ちました?」
「ううん。今来たところだよ」


違う、本当は一時間も前から君のことを待っていた。

ついでに言えば、今は待ち合わせ場所の30分前。
せっかちな君がたまらなく愛おしい・・・。



「望さん、ここが会場ですのね。わたくし、さっきから
わくわくして止まりませんの」
「僕もだよ。師匠、君が来るって言ったらとても張り切っていたし」
「ふふっ。相変わらずですのね。誰かにそっくりですわ」
「そうかな?」
「似てますわ。マジックをしているときの楽しそうな表情とか」
「・・・ありがとう」



いつも、君には素敵な不意打ちをもらってばかりだね。
心が、感謝の気持ちでいっぱいになる。



「望さん、早く行かないと始まってしまいますわ」
「うん、そうだね」


そうして、せっかちさんな君の手を握りながら、会場に向かった。




◇◆◇




「ふぅ。本当に素敵でしたわね」
「そうだね。師匠のマジックはいつも惚れ惚れするよ」


ショーが終わって、うっとりした表情の君、
いつか、自分のショーでそんな表情の君を見たいな。

そう思いながら、そんな彼女の表情に見とれる。



「今度はわたくしの先生のファッションショーにご招待しますわ」
「楽しみにしてるよ」


そんな会話を交わして、気が付くといつの間にか君の家の前。



「望さん、今日は本当にありがとうございます」
「ふふっ どういたしまして。それじゃあ、また今度」
「・・・おやすみなさい」



そう言って笑う君。
だけど、どこか淋しげで、儚く見える。


別れたくないから。
また、暫く会えなくなってしまうから。


その気持ちは僕も同じ。
それを分かって欲しくて、思わず君を胸に抱く。



「クリス・・・離れていても、会えなくても、心は一緒だから」
「望さん・・・私、頑張ります。あなたと暮らせる日まで」
「うん、僕も頑張るよ。君の側にいられる日まで」
「望さん・・・愛しています」
「僕も・・・愛してるよ」



いつか、一緒に暮らせる日が来るのだろうか?
2年後いや、5年後になるかもしれない。


それでも、君を愛する気持ちは変わらない。
そう確信できる。


だから、いつまでも一緒にいよう。


君と奏でるメロディが、響き続けるその日まで・・・。







THE END






◇◆◇





WEB拍手用に書き下ろした、超ミニミニ短編です。
題して、「望クリのにちじょーpart1」(笑)。

ふたりは大学に行かず、それぞれの道に向かって
修行を続けているという設定です。
なかなか会えないふたりという感じで書いてみました。


中井真里


#BGM 「メロディ by 岡崎律子」


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