作:中井真里
-朝、ふたりで買ったシングルベットの上
「おはよう」
「おはよう」
布団の上で交わされる挨拶
そう言ってあなたは私の髪を障る。
当たり前の挨拶
当たり前だけど、幸せを噛みしめる挨拶
当たり前が大事って知ったのはいつの頃からだろう?
◇◆◇
「いってらっしゃい」
「あぁ、いってくる。お前も遅刻するなよ」
その言葉が合図のように瞳を閉じる
あなたは私の唇に軽く触れる
「今日の講義は午前中で終わりだったよね?
私も今日は昼食前の一時間で終わりなんだ」
「たまには気ままにぶらぶらするか」
「うん。久しぶりだもんね♪」
そんな会話を交わして、あなたは家を出る。
あなたと私はおんなじ屋根の下に住んでいる。
あのときとおんなじ屋根の下、私達は変わっていない。
彼等との想い出も色褪せる事はない。
◇◆◇
「きれいだね」
「あぁ」
目の前には青い海
そして、私達は久しぶりの小旅行
勉強やら部活やらで忙しくて、
ふたりだけでゆっくり過ごせる時間があまり無くて。
一緒に住んではいるけど、それが時々淋しくて。
友達に話したら、ぜいたくな悩みって言われたけど・・・。
私はそのときの友達の表情を思い出してふっと笑った。
「どうした?」
暫く海をぼんやり見つめていたあなたが、
私の様子に気付いてこちらを向く。
「ううん。何でもない」
「思い出し笑いは、スケベな証拠」
「彷徨のバカ。自分だって毎晩しがみついて寝てるくせに」
「そうか?」
「そうだよ」
「・・・・・そうだな。俺って意外と寂しがり屋だし」
あなたはそう言って舌を出して笑う。
「・・・・・バカ」
私はいつもの憎まれ口。
でも、そんなやりとりは当たり前で心地良い。
端から見たらじゃれてるだけって言われるけど。
「未夢」
「ん?」
今日二度目のキスは、潮風の味がした。
◇◆◇
「おやすみ」
「おやすみ」
夜、わたしたちは同じベットの上。
貯めたお金で買ったシングルベット。
そうして自然と肩を寄せ合う。
あなたの腕がいつの間にか枕の代わりになって、
あなたの体温を全身で感じるようになる。
あなたの温かさを全身で受け止めるようになる。
-おやすみなさい
当たり前のひとことで、
長くて短い1日が終わる。
明日はどんな1日になるのだろう?
そう思いながら瞳を閉じる。
明日も笑顔でいられますように・・・。
そう思いながら心地よい夢を見る。
あなたとの毎日が幸せでありますように。
あなたとの毎日が、微笑みで満ちていますように。
そう願う。
そうして朝が来る。
あなたとの1日が始まる。
あなたとの幸せに満ちた毎日が・・・。
THE END
◇◆◇
WEB拍手用に書き下ろしました、
超ミニミニ短編、第一弾でございます。
題して、「みゆかなのにちじょーpart1」(笑)。
中井真里
#BGM 「いつでも微笑みを by 岡崎律子」