作:中井真里
最近、魅録の様子がおかしい。
あたしが一生懸命話し掛けても上の空だし
授業中もぼーっとしていることが多い。
かと思ったら、訳の分からないことで怒ったり。
さっきだって・・・。
□■□
今週最後のホームルームが終わった教室は
やけに慌ただしかった。
お互い、週末の予定でも自慢し合っているのだろうか?
あたしはそれどころではないけれど。
「なぁ、悠理。週末空いてるか?」
「清四郎と勉強する約束してるけど?
あたし、今度の試験もやばいからさ」
あたしがえへへと笑って頭を掻く。
「・・・そっか」
魅録はそう言って軽くため息を突いた。
「でさぁ、野梨子と可憐も来るんだって。
あたし憂鬱だよ。あの二人がテスト勉強なんて
したら、絶対喧嘩になるに決まってるし。
清四郎のやつは厳しいし・・・。あたしの週末が・・・。
やつに頼らなければならない自分が悔しいんだけどな。
こればっかりは。あたしってバカだしね・・・っておい
魅録聞いてるのか?」
「ごめん。俺、今日は帰るな」
魅録はあたしの問いかけにも答えず
そう言い残して教室を後にした。
扉の大きな音が部屋中に響き渡った。
その表情は怒っているように見えた。
その様子に暫く呆然としていたが、
ふと気が付くと、周りの視線が痛い。
あたしはそんな視線の波を掻き分けながら
いそいそとその場を後にしたのだった。
□■□
その日、食事を早々に済ませ、自室に戻ったあたしは、
さまざまな考えを巡らせた。
冷静に考えてみると、魅録の自分を見る目が、今までと違うような気がする。