作:中井真里
君に逢いたくなって 気が付いたら、車のキーを握っていた。
ひとしきり降る雨は、まるで、今の自分の心を表しているようだった。
雨は、もう暫く止みそうにない・・・。
◇◆◇
「お嬢様、クリスお嬢様」
自分を呼ぶ声に振り返ると、世話係の佐々木が立っていた。
元々花小町家の別荘の管理をしていたが、
クリス自身の希望でパリの母方の実家まで付いてきていた。
別荘の方は、佐々木の妹が留守を守っている。