噂の彼女【数年後 彷徨×未夢】

作:聖 叶都


2人が大学生。
まだお付き合い段階。

オリジナルキャラ。
彷徨の大学の同級生隠岐くん登場。


あの宇宙から来た1人と1匹が自分の星に帰ってから数年。
彷徨は、大学生になっていた。
相変わらず、冷静でクールな彼だが、今日はいつもの2割増しで表情が暖かい。
それは、久方ぶりの逢瀬をひかえているからなのだが。
そんなこと露とも知らない、彼のファンの女の子たちは、ひそひそと噂話に花を咲かせた。

無事抗議を終え、一瞬すら惜しいと言わんばかりに大学を出ようとする彷徨。
「おい。西園寺ぃ。何そんな急いでんだよ。今日さ、時間ねぇ?飲み会やんだけど。」
顔見知りの男が叫んだ。
「無理。悪いな。隠岐。」
「またかよ。お前が来ると女の子のテンションが違うんだよー。なぁ、ちょっとでもいいから。」
断っているのに、未だ食い下がる隠岐。
「女の子来るんなら、尚更だめだな。俺、彼女いるから。」
「まぢで?彼女いたのかよ!まぁ、お前の見た目ならしょうがないか。どんな子?」
「秘密。」
「なんだよー。」
そんな会話をしていると彷徨の耳に聞き捨てならぬ話が聞こえてきた。

「おい!なんか、門のとこにめちゃめちゃ可愛い女の子いるらしいぜ?」
「どんな子?」
「長い金髪のアイドルみたいな子だって。見にいかねぇ?」

彷徨は能面のような顔を浮かべ、すぐに席を立つ。
「悪い。俺、もう行くから。」
返事も聞かずに、踵を返す彷徨に、隠岐はただならぬものを感じその背中を追いかけることにした。

「ねぇ、君名前なんて言うの?」
「この大学の子?何学部?」
「ねぇ、教えてよー。」
数名の男に囲まれ、怯えながら困り果てている金髪の少女。
美人!というわけではないが、綺麗に配置された顔としなやかな身体に穏やかで優しい雰囲気の加わった文句なしの美少女―――未夢だ。

「いや。あのぉ。私人を待ってまして…。」

何を言っても聞く耳を持たない男達に思わず頭を抱えた。

うわーん。彷徨ぁ。助けてよぉ。

こんなことなら、待ち合わせの駅から歩いて3分。
恋人の大学が見てみたいなんて、好奇心を出すんじゃなかったと、未夢は心底後悔していた。

「未夢。」

聞き馴染んだ声が響く。
若干低めで不機嫌そうな声。しかし、半パニック状態の未夢はそれに気付かない。

「彷徨ぁ!」

未夢が彷徨に飛びつく。

「ごめん。待たせたな。」
「…っっ!」

突然のキス。
未夢の顔が真ッかに染まり、金魚のように口がパクパク開閉する。
それと同時に、彷徨は未夢に群がっていた男達をぎろりと睨んだ。
俺のものだ。といわんばかりに。

「じゃ、行くか。」
「は…は…はひぃ…。」

未だパニックから抜け出せない未夢の肩を抱いて、彷徨が歩き出す。
学内随一のモテ男の突然の行動と余りの迫力に、石化してしまった周囲を完全に無視して…。

余談だが、この1件はあの隠岐を中心に知れ渡り、女の子たちは絶叫、「あの西園寺彷徨のすごく可愛い彼女」が学内中の噂となるのは次の日のことだ。



所要時間30分。
今世紀最大級の駄文。


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