Mermaid―喜びの人魚姫―

作:神風梨音


人魚姫の話には続きがありました・・・。

一人ぼっちの人魚姫。
毎日毎日湖の底で泣いていました。
そんなある日人魚は夢を見ました。
夢には若者が出てきました。
若者は言いました。
―いつか一人の人間が来る。その人間の力を借りれば私達は再び逢える―と。
そう言い残し若者は消えました。
夢から覚めた人魚姫。
その目に涙はありませんでした。

再び二人は巡り会えるのでしょうか・・・



「やっと・・・やっと逢えた・・・【ウォンダ】・・・っ」

ムーンライトは墓に近づこうとする。すると・・・

「おい・・・っ」

「えっ・・・」

後ろから誰かに呼ばれて振り返る。すると彷徨達がこちらを心配そうに見ている。

「「「未夢(ちゃん)・・・」」」

「光月さん・・・」

「未夢っち「未夢っ!」

(彷徨・・・皆・・・)

「始まるわ・・・」

ムーンライトが呟く。その声には喜びがつまっているような響きで。その途端風が再び吹き始めた。墓を中心にして、台風のように強く、それでもどこか優しく暖かい・・・。とその時、墓から一人の人間の姿が浮かび上がった・・・。しかもその若者は・・・

「「「「「彷徨(くん)っっっ!?」」」」」

「俺っ!?」

(か、彷徨っっっ!?)

浮かび上がった人影は彷徨・・・もとい、彷徨と瓜二つの―ウォンダ―だった。

「ウォンダッ!』

突然未夢の体から人影が出てきた。影は体から離れウォンダの方へと近づいていく。そして影は形をはっきりとさせていく。ウォンダの隣に着く頃には誰もが人魚だと分かった。

『ありがとうございます、未夢』

『貴女のおかげで我らは再び出会うことができた。本当に感謝しています』

「そっ、そんな!・・・お二人の想いが強かったからできたんですよっ、私はただ手伝っただけですから・・・」

突然風が吹き始める。すると二人の姿が消え始めた。

『別れの時がきた・・・』

「別れ・・・」

『ええ・・・そろそろ私達はもといるべき場所に還らなければなりません』

「そう・・・ですか・・・」

別れを惜しんでいる未夢にムーンライトは何か思いついたのか未夢の耳元で何かを話し始める。話し終わると未夢の顔は少し赤くなっているが笑顔だった。
「また・・・また、会えますよね・・・っ!」

ムーンライトはゆっくりと微笑む。そしてやがて姿は見えなくなった。そこにはただ、七人の少年少女が佇むだけだった・・・。



その日の夜―・・・

「そんなことがあったんですか〜」

ワンニャーがお茶をすする。

「そうそう、まったく大変な一日でしたなぁ〜」

「そういえば・・・、なんで人魚は未夢の体に取り付いたんだ?」

「う〜ん・・・、何か波長が同じだからとか言ってた」

「・・・そういうことか・・・」

「「どういうことっ!?」」

「噂で聞いたことなんだけど、生物にはもともと波長というのがあって、それは一人一人違うらしい。だけど偶然かは知らんが二人の波長が同じだった。そしてそれを事前に予知していてずっと待っていたんじゃないかと思う・・・」

「ふ〜ん・・・」

「なかなか不思議なお話ですね」

「そういえば未夢、あの時なんて言われてたんだ?」

未夢の顔が赤くなる。

「ナイショ〜〜〜〜ッッッ!」

こうして西園寺の夜は更けていった―・・・

―終わり―



『この短い時の中で人は出会いと別れを繰り返す。だけど忘れないで、別れは永遠では無いってことを。互いが強く想っていればいつかまた逢えるってことを。私達のように。・・・アナタをずっと想っていてくれている彷徨君と幸せにね♪』


やっと完結しましたMermaid。・・・しかし遅い!遅すぎる!
何かもう終わりの方がだんだんずれてきまして・・・本来の結末とは違う方向に・・・。
でもこんな小説でも読んでくださるっていうのは嬉しいことですね!

はてさて、私の小説を読んでいてお気づきの方も多いと思いますが、私の作品では望の扱いが酷いです。(望ファンの方すいません;)
・・・私、望のこと好きですよ・・きっと。


[戻る(r)]