「山稜ふいご」はどんなやつか

part2

作:山稜



―守備範囲広いよね。少女漫画から特撮まで。
 自分ではあんまり、守備範囲広いとは思ってないんやけどねぇ。
 趣味にしても、いろんなジャンルのもののホンの一部分を、ふか〜くツッコんでるだけなんで。

―それじゃ、自分で趣味だと思ってるのは何なの?
 (声を高くして)えっとぉ、音楽鑑賞とぉ、読書とぉ、
―音楽鑑賞ってもフュージョンだし、読書ってもマンガ…
 言うなって(恐い顔)

TRUTHばっかり吹いてたな

―フュージョン好きっていうのもめずらしいよね。
 う〜ん、あんまり見かけないね。
―なんでまた。
 オヤジさんがジャズ好きなのが影響してるかな。うちのきょうだいはみんなフュージョン好きだね。ねーちゃんはカシオペアばっか聴いてたし、アニキはMALTAとか高中(正義)とか渡辺香津美とか。その中にナベサダ(渡辺貞夫)とかスクエアとかもあって。
―気に入ったわけだ。
 そう。あたしの好みっていうのは中学生のころに固まったのが多くって…ちょうどその頃、ねーちゃんは結婚するしアニキは大学に進むしって、家庭環境がガラッと変わった時期でね。その頃にF1のテーマがTRUTHになって、すごく印象的で。親にヤマハのWX11ってウィンドシンセを買ってもらって、あれ(TRUTH)ばっかり吹いてたな(笑)
―そこからスクエアのファンに?
 いや、そうでもない。一時期はナベサダばっかり聴いてたけど、結局スカッとするのはスクエアで。伊東(たけし)さん脱退まで、毎日ウォークマンで聞いてたなぁ…。「TRUTH」「YES,NO.」「WAVE」「NATURAL」は絶対手放さないって決めてる。
―いわゆる「黄金メンバー」だね。
 そうね。安藤(まさひろ)さん、伊東さん、和泉(宏隆)さん、則竹(裕之)さん、須藤(満)さん。だから去年(2003年)の「帰還限定」再結成はうれしかったなぁ…あ、「Spirits」も手放さないアルバムだ(笑)

怪人倒してハイめでたしめでたし、じゃないわけで

―中学生の頃に固まった好みといえば、他には?
 特撮(笑)
 語るのに外せないのは「仮面ライダーBlack」だね。

―Blackは何がよかったの?
 ストーリーが。ゴルゴムに改造されてる時点で、親にも裏切られてるわけでしょ。兄弟同然に一緒に暮らした親友は脳改造までされてて、どちらかを倒すまで戦いは終わらない。結局は「お前は一生苦しむことになるんだ。お前は親友を…この信彦を抹殺したことを、一生後悔して生きていくんだ」だもの。最終回でこんなことを言われてしまうぐらいハードなストーリーで、「いまのヒーローものってこんなんなのかっ!?」と。
 もうこのあたりから、昔の石森(石ノ森章太郎)作品読み漁ったな。仮面ライダーもキカイダーも、幼稚園に行くか行かないかのころに再放送してたのをアニキが見てた覚えしかなくて、「ライダーキック!」しか印象になかったのね(笑) でも原作はすごいからな〜。キカイダーもピノキオとは思わなかったし、ライダーが当時の世相の風刺だとは…石ノ森センセイは偉大です(笑)
 まぁそれからしばらくは、ちょっと遠ざかってたわけですけど。RXがアレだったんで(苦笑)
―舞い戻ってきたわけだ。
 「特警ウィンスペクター」でね。なんかしらんけど、うちのオヤジさんがジライヤとかジバンとか見てて(笑)、その後番組でちらっと見てみたら、主役の人(山下優氏。香川竜馬役)がかっこよくてね。それで見始めたら、怪人とか怪物とかぜんぜん出てこない。フツーの警察で、犯人は生身。でも犯罪は凶悪化してたり複雑化してたりで、そういうのを解決する特捜チームなわけで…部長刑事と西部警察を足して30分にしたような感じ?(笑)
 でもこれも新鮮でね。なんか怪人倒してハイめでたしめでたし、じゃないわけでさ。見ごたえあって。クラスの友だち…女の子よ?「こんなんあるよ」って話をしたら、しばらくして学校で「これホラ」って特警手帳パカッとやられたのにはまいった。女の子よ?(笑)

―よく買いに行く勇気が(笑)
 売り場で「弟のプレゼントなんで、リボンつけてください」とか言ったらしい(笑)
 とにかく、ウィンスペクターで「正義のヒーロー」を強烈にすりこまれたな。アニキは「宮内洋っ!宮内洋っ!」ってわめいてるし。確かに本部長は目立ってたけどね。
―あの世代はアオレンジャーとか(仮面ライダー)V3とか…
 ズバットとかね。興味持ったんだけど、そのときはほっといた。最近だよ、ビデオを観て正しいヒーロー像というのを学んだのは(苦笑)

悪いものは悪い、でスカッと解決しちゃうような

―アニメのヒーローは?
 ウィンスペクターの頃に、「勇者エクスカイザー」っていうのをやってて。
―それまでは見なかった。
 だって男の子向けの、って思ってたしねぇ。やっぱり、「うる星やつら」とか「クリィミーマミ」とか「マジカルエミ」とか、そういうのを見てたわけですよ、子どもの頃は。
―「スタジオぴえろ」ばっかりだ(笑)
 当時は知らなかったんだけどね。あの絵の感じが好きで。アニキとお小遣い出し合ってアニメ誌買ってさ、それで「ぴえろ」っていうのを憶えたな。
 「きまぐれオレンジ☆ロード」も好きだった、ぴえろっていうから見た、って記憶がある。コミックス全部買ったりしてね。
 宮原(まふゆ)しゃんって、そのあたり系のタッチのイラスト描くでしょ。なんかなつかしくて、ほわ〜っとしちゃうんだな。

 そうそう、ぴえろって言えば、ミンキーモモ!好きだったな〜…見たのは再放送でだったけどね。うちは当時、テレビ東京系の番組が見れなかったし。
―「空モモ」?
 っていうらしいね。小山茉美さんの声のやつ。そのイメージ強かったから、「海モモ」だっけ、林原めぐみさんのは見なかった。姉が「イメージ崩れたぁ〜」とか言ってたし。結局関西では、ちゃんと放送されなかったらしくて、見ようにも見れなかったんだろうけど(笑)
 ポケモンアニメの湯山(邦彦)監督ってモモの監督さんなのね。だからかもしれない、ポケモンも好きなのは。

―エクスカイザーに話を戻そう。なんでこれなの?
 この頃になるとね、どこのアニメも「シリアスだったらよい」みたいなのになっちゃって、ぼけーっと見てて楽しいのがなくなっちゃった気がしてね。ちょうどウィンスペクターで「正義のヒーロー」がマイブームだったし、こういうすっきりと「正義のヒーロー」なのがいいなぁと思ってた。
 Z(ゼータ)ガンダムとかZZ(ダブルゼータ)とかドラグナーとか、さっきの仮面ライダーBlackでもそうだけど、全体的な流れとしてシリアス系に流れていった時期だったと思うのね。
 ゼータは当時気に入ってたんだけどね。「さかしいだけの子供が何を言う!」って(笑) アニキは駄作だ駄作だって言うけどね、救いのない話だし、何が言いたいのかわからんって。当時は気に入ってたからハラ立ったけど、ハタチ越えて映画の(ファースト)ガンダムを観てからだったら確かに…ジュピトリスもアクシズもない話が書けんかと(苦笑)
―ははぁ、それでガンダムW(ウィング)なわけか。
 正直「またやるんか」と思ったけどね。
 (ファースト)ガンダムのよかったのは、ひょんなことから一兵卒になってしまった少年の眼から見た戦争、ってことだったわけでしょう。「ぼくには帰るところがあるんだ」と。それをVガンダムでもう1回やり直そうとして、結局なに言おうとしてるのかV2ガンダムあたりからわからんようになって(苦笑)、仕切りなおしのためにGガンダムでぶち壊しにはじけ飛んで(大笑)、そのあとまた戦争モノって言うからさ。(ガンダムWは)最初半分ぐらい見てないもんね。

 でも、他人を振り回していきながらも大儀を貫き通したトレーズ…閣下って言わんと英未しゃんにおこられるな(笑)、というキャラのおかげで話の軸がちゃんと通ってるシリーズで、結局はできる限り観た。あれがあたしとしちゃ、一番面白いかな。ガンダムらしさと言えばSEEDの方がそれらしいんで、そのあたりは好みの問題だろうけど。
―Gガンダムは?
 …ごめん、「面白い」といえばあれが一番面白いな(大笑) 理屈ぬきやもんね、「石破ラ〜ブラブ天驚拳」やもん(大笑) 「大量にガンダム出したらええんやろ、出したら!」みたいな、スポンサーへのあてつけやったんかも知れんけど。
 ヒーローものと言えなくもないよね。だから気に入ったのかもしれないけどね。

―おお、話が戻ってきた(笑)
 わはは(笑)
 で、エクスカイザーの頃はもう、ちょっと疲れててさ。シリアスな話、フクザツな構成に。設定が緻密ならなおよくて、マニア受けはするけど子どもはついていけないぞ、みたいなのに…その当時のクセで、自分が書くときは設定を細かく細かくするけどね(苦笑)

 そういうんじゃなくて、もっと「水戸黄門」とまで言わなくても「長七郎天下ご免!」ぐらいにわかりやすいのはないかと。
 …あるじゃないかと(笑) 宇宙警察のエネルギー体の刑事が活動用に乗り移ったクルマがロボットに変形する、そのクルマの持ち主の息子と協力して事件を解決する…いいじゃないですかこれ、子供に安心して見せられるいいアニメじゃないですか、と。

 ヒーローものの醍醐味ってあるじゃない。「百鬼夜行をぶった斬る」じゃないけど(笑)、悪いものは悪い、でスカッと解決しちゃうような。そういうのがあって、あ〜ヒーローものっていいよな〜ということになっちゃったわけだ(笑)

どっかでバランスできてればいいかな、と

―んじゃシリアスなのはもういい、と。
 そういうわけでもないんだな…。
 ヒーローものっていうのはさ、もやもやとした世の中で、ある意味、カタルシス(=精神浄化作用)っていうか、さ。だから、そこにいたるまでにはある種、ちゃんと入りこめるようなお膳立ては必要なんじゃないかと思うのね。そういうことから言えば、シリアスな話として展開されるものも欲しいっちゃあ欲しいわけでね(苦笑)

 いまだに、シリアスな話、見ごたえのある展開を求める気持ちと、わかりやすいスカッとする話を気楽に見たいっていう気持ちとが、まじり合ってるな。エクスカイザーやなんかの当時だって、そういいながら翌年か翌々年か忘れたけど「テッカマンブレード」なんか見てたし(大笑)、アギトとかファイズとか、そういうのを一生懸命見たくせに、今年はデカレンばんざい!なんて言ってたり、ずっとポケモン見てたりするわけだから(笑)
 どっちがいい、わるいって話じゃないのね。バランスの問題で。「パタリロ!」も好きで見てたけど(笑)、あれみたいに1作品の中でバランスしてなくてもいいから、どっかでバランスできてればいいかな、と。アニメとか特撮とかいう範囲じゃなくて、もっと広い範囲でもいいから、どっかで。
―そのために守備範囲、広くとってるわけだ(笑)
 そうかも知れんわ、確かに(笑)



[戻る(r)]